【出版時評】コロナ禍の年の瀬

2020年12月21日

 今年の重大ニュースをまとめるために振り返ると、やはり新型コロナウイルス感染症拡大に関連する話題が多い。書店の閉店や雑誌の休刊、広告不振などマイナスの影響が多い一方で、出版物に根強い需要があることが実感されたり、オンラインによるコミュニケーションの広がりが、新たな営業活動などの可能性を示した面もある。

 

 年末に向けて、東京都では1日に確認された感染者が800人を越えるなど、感染は収まる気配を見せない。例年なら週に数回はある忘年会は一切なくなり、年明けの予定表も夜はほぼ空欄だ。こんな年末年始は経験がないし、これほど長く、もはや常態になるという経験も初めてだ。

 

 もちろん出版業界が抱える流通危機など重要課題がなくなったわけではない。むしろ、DXの進行などによって、変化が加速する可能性もある。コロナ禍という要素が加わったことで、先が見通しにくくなったことは確かだろう。

 

 こんな風に感じてしまうのも、人と会わなくなったせいだろうか。人と会い、話をする中で、いろいろな情報を得られるのはもちろん、自分の考えが整理されたり、無関係だと思っていたことがつながったりする。そこには一方的に情報を摂取するのとは違って、刺激と反応という動きがあるように感じる。来年になったら、そうした活動ができるようになるのだろうか。期待を持ちたい。

【星野渉】