【行雲流水】文化通信2020年11月30日付

2020年11月30日

 某月某日

 赤坂「一笑美茶楼」にて新星出版社・富永靖弘社長、中央経済社ホールディングス・山本憲央社長、ベレ出版・内田真介社長と私で歴史家・加来耕三さんを囲む。

 話は40年周期説から。大政奉還から維新、富国強兵を経て、1905年、日露戦争をピークに45年の敗戦まで混乱と破壊が続く。その後の復興と高度成長は85年のプラザ合意まで。以降、バブル崩壊とリーマンショック、デフレなど、失われた20年、30年とも。それがあと5年続くことに。

 コロナ禍を大恐慌になぞらえれば、来年の日本の有り様はすでに昭和5年の新聞紙面に投影されているとも。恐慌の波を被った彼の年は就職斡旋の広告が多く掲載され、中には詐欺紛いのものもあり世情は荒廃したと。来年は出版業界、特に取次にとって厳しい年になるとのご託宣。講談師顔負けの加来耕三節は毎度オモロイ。

 某月某日

 神戸に飛び、神戸新聞社に高梨柳太郎社長を初訪。眼下に鎮座する潜水艦に驚くと、製造・修理できるドックはここだけと神戸愛が顔を出す。コロナ禍にあって新聞購読とデジタル広告は善戦するもスポーツ紙は厳しいと言うが、共に明るく前向きな高士薫会長と二人で難局を切り抜けそうだ。

 夜は神戸に本社のあるフェリシモの矢崎和彦社長、エスコヤマの小山進オーナーシェフたちと元町の薪焼きスペイン料理の店、「bb9」へ。熾火で焼く、というより加熱する技が見事。"究極のバーベキュー"を標榜する店である。

 某月某日

 大阪は本町に創元社・矢部敬一社長を訪ねる。書店の魅力について話が及ぶと、JPROが書誌情報インフラとして機能しつつあるが、欧米では1年先の情報が提供されていて、独自色のある書店づくりを可能にしていると。

 再び神戸に赴き出版ワークス・工藤和志社長を訪問。書店経営の経験から、金太郎飴的な書店経営では存続は難しい、書籍の流通は崩壊の危機にあると。

 両社長ともに書店と取次どちらも体質の転換が必要との認識。

 続いて落合直也社長を訪ねBL出版に。図書目録にあるガブリエル・バンサンの線描が素晴らしい。「『味の手帖』で長くお世話になっている藤枝リュウジさんの絵本が好きです」と話したら、「うちで回文の絵本、『ぞうからかうぞ』など数冊出していますよ」と。思いがけぬ縁で繋がり嬉しくなる。

【文化通信社 社長 山口】