【出版時評】内と外とのギャップを超えるオンライン商談会

2020年10月12日

 複数の出版社が参加して書店向けに商談を行う「書店向けWeb商談会 2020秋」には第1回の3倍に上る出版社が参加し、書店の参加登録も開始時点で前回を超えたという。移動制限の中で生まれた動きだが、定着しそうだ。

 

 この商談会は、「出版社・玩具メーカーなど」が出展し、「本を扱うあらゆる小売店様」が参加できるとある。参加する出展者も来場者も、取次の取引口座の有無といった、これまでの枠組みやルールをあまり感じさせない。

 

 この商談会でもトークイベントに参加していた楽天ブックスネットワークの少額取引サービス「Foyer(ホワイエ)」の担当者によると、メディアに取り上げられるたびに、業界外からの引き合いが増え、コロナ禍でも取引先は増えたという。本という商材の魅力を感じる人々が、異業種に多いのだ。

 

 確かにコロナ禍をはじめ、これまでも災害が起きると本や書店へのニーズが高まり、人々はオンラインだけでは満足せずに書店に足を運ぶ。その一方で、多くの人が出版業界に「不況業種」というネガティブなイメージを抱いていることも確かだ。

 

 このギャップを越えるためには、今の時代に本や書店の魅力を感じている人々が、業界の仕組みを刷新していくことが必要だ。そのために、従来の枠を軽々と越えるオンライン商談会の意義は大きいと感じる。

【星野渉】