【行雲流水】文化通信2020年9月7日付

2020年9月7日

 某月某日

 来週号の「トップインタビュー」に新橋の料亭「金田中」の女将、岡副徳子さんを訪ねる。主人の真吾さんとふたり、大学の後輩ということもあって、店の敷居は高いが気安く頼める関係ではある。

 私事だが、40代半ばで結婚した折にもお世話になった。大小の座敷に学生時代の友人、茶道やサークル仲間、ゼミの同期、会社関係、親戚などが集い、再会と、ついでに?我々の結婚も祝すという座組みとした。冒頭、大広間で鏡開きと乾杯の発声と私の挨拶のみで祝辞は無し。途中、新橋芸者衆の踊りと三味線で非日常のひとときを楽しんでもらった。そんなご縁もあり、料亭文化の伝統を守るために一役買えればと思っている。

 某月某日

 安倍総理が辞任を表明する。安倍さんとは、自民党幹事⻑だった2004年に、『味の手帖』巻頭の「牛尾治朗対談」で同席している。その日、会場に早く到着した安倍さんと2人で交わす会話。

 「ホルモンがお好きですよね」。「えっ?」と訝る安倍さん。「渋谷の﹃ゆうじ﹄にときたま行かれますよね。あそこで美味しいホルモンを召し上がれるのは、ちょっとだけ僕のおかげなんですよ」。

 実は安倍さん、知る人ぞ知るホルモン好きで、くだんの店に昭恵夫人などお仲間で行かれた当初、夫人の友人に頼まれ"特別手配"をしていたのである。

 「そうでしたか、知らないところでお世話になっているんですね」とにっこり。その笑顔と謙虚な一言で、安倍晋三ファンのひとりとなったことである。

 某月某日

 3月に99歳で亡くなられた、朝日新聞社社主・村山美知子さんのお別れ会に出席のため、久々に空路、大阪へ。会場に並ぶ幼少時からのポートレートや映像の気品あふれる笑顔が美しい。心血を注がれた音楽文化振興事業では、67年に史上初めてバイロイト音楽祭を招聘されたが、2度目は89年の渋谷Bunkamura オーチャードホールこけら落とし公演であったことを懐かしく思い出す。

 岡本順執行役員に遭遇。広報担当としてお世話になっていたが、6月末に管理・労務・コンプラ・人材戦略などの担当となっていた。当社のギフトブックキャンペーンについて話が及ぶと、すぐにメディアビジネス担当の金山達也執行役員と神戸久局⻑を引き合わせてくれる。軽快なフットワークと気遣いに感心し、感謝する。

【文化通信社 社長 山口】