【行雲流水】文化通信2020年7月6日付

2020年7月6日

某月某日

 『味の手帖』トップコート・渡辺万由美社長の対談でバスキュールの朴正義社長から話を聞く。若くして起業した当時、電通でも年に1つ取れるかという国際的な広告賞やクリエイティブ賞を数百も受賞するという恐るべき実績を持つクリエーターである。

 そして今、本業の傍ら、国際宇宙ステーションにある日本実験棟「きぼう」に開設した放送局の番組プロデューサーとして夢を追う。トップコート所属の俳優、中村倫也と菅田将暉がメインクルーとなり、宇宙と地球を繋いで、国や地域、人種の違いを超えた共感作りをしたいのだという。経済的には持ち出し一方だが、宇宙から夢を届けたいし、自分も夢を見たいと言う朴さん、とてつもない道楽者か、壮大なロマンチストである。 

某月某日

 この秋に向け企画を進めている、ギフトブックキャンペーンの発起人代表をお願いする阿刀田高さんを浜田山のご自宅に訪ねる。

 書店に足を運ぶ顧客の〝客単価〟を上げるべく、自分のために買うモノにとどまらず、他人に贈るモノとしての新たな価値を創出しようとする取り組みである。様々な分野で活躍する本好きの著名人30名が「贈りたい本」3冊を選び、メッセージを添えて収録したカタログを書店店頭で販売する。

 阿刀田さん、「自分は若い人に『広辞苑』を贈りたいかな」と。そこには見知らぬ言葉との奥深い出会いがあるからだと。私も小学生時分、親に訊けない「ストリップ」や、その記述にある「煽情的」など未知の言葉を辞典で追いかけコーフンした記憶がある。

 初めてのチャレンジとなるこの企画、結果を伴う継続的な取り組みとすべく目下奮闘中である。

某月某日

 全社員との面談がスタート。20名に満たない小所帯だが、年2回、じっくり1時間以上かけて、趣味や家族の近況、職場の人間関係など〝雑談〟する。個人的な悩みや仕事のストレスがないかチェックすると同時に、直接想いを伝えあう機会であり、カイゼンのヒントをもらうことも。こればかりはリアルに「面」談するに限る。

 小社に来て3年目、この面談も5回目ともなると、成長する子どもや親御さんの様子を聴くのが楽しみになる。「社員は家族」なぞ令和の時代には流行らないのだろうが、がみがみ小うるさい昭和の頑固親父を自認する身としては、それもアリかと思っている。

 

【文化通信社 社長 山口】