【行雲流水】文化通信2020年5月25日付

2020年5月25日

某月某日

 『味の手帖』の取材で、子どもの食卓株式会社の権寛子社長と時節柄「銀座・吉兆」からテイクアウトした弁当を昼にご一緒する。

 「行楽弁当」(6480円)は、八寸は鰻八幡巻や稚鮎焼揚げ、いくらなど。白身と鮪の造り、黒毛和牛のすきしゃぶ、とりどりの野菜炊合に、豆ご飯や赤飯、穴子笹巻寿司がみっちり詰まっている。これには冷酒が欲しかった。

 権さん、外資系証券会社でキャリアを積むが、出産後保育園が見つからず、やむなく退職し専業主婦に。そこから心身の礎を作る大切な子育ての期の「食」のソリューション事業を創業。①子ども向けの優しい味付け②栄養バランスのとれた食事③化学調味料・保存料・着色料不使用を約束事として厳選した食材と調味料を使った弁当販売をスタート。現在は子どものための冷凍食品の通販に舵を切っている。成功を祈りたい。

某月某日

 「味の手帖・お腹のすくオンラインセミナー」第3回目。50名を超える参加者に、マッキー牧元さんが寿司の歴史やマナー、名店情報など楽しく語り盛り上がる。

それにしても昨今の寿司屋は高い、予約がとれない、なにより、座ればつまみが次から次へと出て、握りと巻物、「お任せ」という名の“お仕着せ”は正直、苦手である。ふらりと暖簾を潜り、今日の貝は?白身はなにがある?と訊いたり、鮪は赤身とヅケを一貫ずつとか、烏賊は塩、穴子は塩と山葵で、酒はぬる燗、などとやりとりを重ねるほどに、寿司も好みも握られ常連となっていく。そんな町場の寿司屋が好きなのだが、もはや都心では、後継者難で懐かしい昭和の情景となりつつある。

某月某日

 毎日新聞夕刊に「文豪珈琲」の紹介記事が掲載される。嬉しいことである。書店は新刊のみならず、思わぬ本との出会いがある大人の遊園地と思っている。頭と心のサプリメントとなる本と一緒に求めるのにふさわしいものを、と作ったのが「文豪珈琲」である。コーヒーを飲みながら、子どものころに読んだ芥川龍之介の「蜘蛛の糸」や「杜子春」、宮沢賢治の「注文の多い料理店」などを久々に紐解いてみるか、と私同様に思ってもらえると有難い。ちなみに我が家では朝に浅煎りさっぱり味の「宮沢賢治」をたっぷりめに淹れ、午後は深煎りでコクのある「芥川龍之介」を楽しんでいる。今日は韓流ドラマを観ながらだが…(笑)。

【文化通信社 社長 山口】