【出版時評】重苦しい新年度の幕開け

2020年4月6日

 なんとも重苦しい雰囲気で新年度を迎えた。今のところ身近で感染者は出ていないが、日々増える感染者数や逼迫する医療体制についての情報などに接していると、新しいことを始めようという気持ちになりにくい。先が見えないことがなによりも悪い。

 

 出版社では在宅勤務はむろんのこと、書店などへの訪問営業や来客を禁止しているところもある。もちろん予定されていた会食などはすべてキャンセルとなり、取材などのアポイントメントも、電話やメール、このところよく聞くZoomでのやりとりになったりと、人と対面する場面が極端に少なくなった。

 

 とりわけ人と人とのコミュニケーションが基本にある出版という仕事にとって、とても厳しい環境だといえるが、ITの力を借りてどこまでカバーできるのか。

 

 こうした新しいツールの活用が世代や経験に左右されるという意味では、この業界にとっても、感染症の拡大がいままでの慣行や仕組みを一気に変えるインパクトになる可能性は高い。

 

 それでもこの時期、各社からは機構改革や人事異動、新会社設立、そして新企画などの案内が届く。こうした環境下でも各社は動いているのだ。出版はこれまで「良いこと」も「悪いこと」も糧に発展してきたのだから、この未曾有の難事にも、飲み込むぐらいの意識で立ち向かいたいものだ。

【星野渉】