【行雲流水】文化通信2020年3月30日付

2020年3月30日

某月某日

 「三島由紀夫VS東大全共闘」を観る。1969年5月13日、東大全共闘の学生たち約1000人と対峙した伝説の討論会の記録フィルムを軸に、人間・三島由紀夫の生きざまを活写したドキュメンタリー映画である。映画興行が壊滅的な状況で、70代と思しき全共闘世代がぽつりぽつり30人ほど。私は当時小学校5年生。ひょっとして最年少か。

 「私は諸君の熱情は信じます。他のものは一切信じないとしても、これだけは信じるということを分かっていただきたい」という言葉に、左右互いの主義主張は異なるが、共に頽廃堕落した体制をひっくり返そうとする憂国、愛国の志をみることができる。

 1年半後、自衛隊市谷駐屯地で三島らが壮絶な割腹自決を遂げた日の衝撃の記憶はいまなお鮮明である。蹶起を呼びかけた自衛隊員から無礼に野次られ、バルコニーから姿を消す三島の映像を悲痛な想いで観たものだ。

 今こそ、著しく熱量の乏しい若者たちには、ギラギラと輝く眩いばかりのダンディズムと知性を纏う稀代の作家の姿から、幾ばくかでもその熱情を感じてもらいたいものである。

某月某日

 年度内ギリギリ、健康診断に赴く。血圧と腹回りで特定保健指導の対象ですと言われ別室へ。非接触のためかモニターを介した会話で、とりあえず半年で5㎏落としましょうねと簡単に宣ういけ好かない保健師である。

 早速昼メシを抜き、夜は東急の後輩たちと三軒茶屋の湖南料理店「香辣里」へ。コロナウィルスの発現地、武漢は湖北省だが、その隣の湖南地方の料理で厄払いするという趣旨である。湖南料理の特徴は、発酵と燻製、そしてハーブを多用することと、この店は控えめだが、スパイシーな辛さにある。

 黒酢漬けピーナッツ醤油漬け、干し豆腐と香り野菜の和え物で始まり、燻製豚耳とニラの炒め物、羊肉のクミン炒め、そして湖南省出身の毛沢東の名を冠した「毛氏紅焼肉」は豚三枚肉の塊を醤油ベースに甘く煮込んだいわゆる角煮。メインは塩水漬けにして発酵させた魚を唐辛子とともに蒸し焼きにした「臭魚」をつつく。〆のチャーハンとビーフンはくだんのご指導により、ひとりパスする。

某月某日

 出版系経営者の勉強会で住友商事グローバルリサーチのシニアアナリスト・浅野貴昭氏にアメリカ大統領選挙の展望を伺う。

 民主党候補は、バイデン氏で決まり。大統領選でも現時点ではバイデン氏が優勢と分析している。歴代最高齢(70歳)で就任したトランプ大統領であるが、 仮にバイデン大統領となった場合、78歳での就任と、大幅記録更新となる。周りはもちろん、本人も言わないが、バイデン大統領が2期務めることは考えにくく、任期途中での辞任も十分にあり得るだろうと。そうなると、俄然副大統領候補が誰になるか注目されることとなる。

 すでにバイデン氏は副大統領候補に女性の起用を明言していて、ニューヨークタイムズなどはカマラ・ハリス上院議員、エリザベス・ウォーレン上院議員、エイミー・クロブチャー上院議員などの名前を挙げているが、左派系の支持獲得を目論むなら、ウォーレン氏が組み合わせとして最適ではないかという分析もあると。正副どちらも史上初、女性大統領含みの女性副大統領誕生となるのか!?

 

【文化通信社 社長 山口】