【出版時評】春の需要期を襲うウイルス

2020年3月23日

 新型コロナウイルスの世界的な感染とその影響がさらに拡大している。ドイツでは6月中旬に予定されていた4年に1度開かれる印刷産業最大のイベント「drupa(ドルッパ)」が早くも来年4月への延期を決めた。

 

 日本の出版業界では、多くの書店にとって需要期である学参・辞典のシーズンにあたる。特に今年は10年ぶりの教育指導要領改訂と、大学入試制度改革が本格するビッグイヤーである。

 

 今のところ、学校の臨時休業に伴って郊外型書店や地域書店などで学習参考書や児童書の売れ行きが伸びている。これまでのところ、復習用や自学自習参考書の売れ行きが伸び、印刷会社へもこうしたジャンルの重版の発注が増えているというから、明らかに休校に伴う需要だと思われる。

 

 ただし、教室で使用する学参類は、印刷の発注を控える出版社もあるという。今後の推移が見えないなか、もし新年度の始業が遅れるようなことがあれば、ということだろう。トーハンは有償教科書の販売時期が遅れていることに対応し、教科書特約供給所(教販)に支払時期の猶予を通知した。

 

 ヨーロッパやアメリカでは書店が閉店し、従業員を解雇(レイオフ)する書店のニュースも流れている。そのような状況にならないことを願うが、身構えておく必要も感じる。

 

【星野渉】