【出版時評】ウイルスによって変わる社会

2020年2月24日

 新型コロナウイルスへの対策として、出版業界でも会合が中止、延期されるケースが目立っている。春は海外でのブックフェアも多く、既に台北国際図書展の延期が決まった。主催する側は、実施するか否か、参加者への告知方法、会場での消毒対策の有無など、頭を悩ませている。

 

 世界中で日々人々が大量に移動する現在の社会で、ウイルスの広がりを食い止めることの難しさを実感する。さらに地球上のあらゆる地域で経済の連携が進んでいることも、改めて痛感させられる。

 

 出版業界でも雑誌付録をはじめとして、中国で作っている製品がなんと多いことか。人出が減ることによる店頭売り上げへの影響に加えて、国際的な経済活動の停滞も大きな懸念材料になる。

 

 最も被害が大きい中国では、出版業界でも在宅勤務などが広がっていて、ネットを利用したテレワークの利用が進んでいるという(3面中国出版レポートを参照)。

 

 もともとスマートフォンや電子決済が普及していた中国だが、そうしたインフラを使っていち早く対応しているようだ。そのことによって、むしろ新しい働き方が普及する可能性もあるという。

 

 かつてヨーロッパから持ち込まれた病原菌でアメリカやオーストラリアの先住民が激減し、その後の歴史を決定づけたと言われるが、今も病原菌は社会を変える要因になるのだろう。

【星野渉】