【行雲流水】文化通信2020年2月17日付

2020年2月17日

某月某日

 『味の手帖』巻頭の「宮内義彦対談」に同席する。ゲストはサキコーポレーションの創業者で今はソニーやオリックスなどの社外役員を務める秋山咲恵さん。名刺を出したら、一度お会いしましたねと。全く覚えていない。ヒトの顔と名前を覚えるのが苦手というだけでなく、300回はプレーしているホームコースも、ティーグラウンドに立てば分かるが、例えば7番ホールは?と聞かれてもどんなレイアウトかにわかには思い出せない。

 

 それはさておき、秋山さんがライフワークとする茶道の話から、日本の伝統文化、伝統芸能の話題に。宮内さん、芸者衆のお座敷遊びがどんどん廃れていく現状を憂い、「経済界の爺さま連中と『伝統芸能振興会』を結成」された由。銀座での“クラブ活動”も悪くないが、「新ばし 金田中」など、きちんとした美味しい料理に、芸者衆の踊りやお座敷遊びは守るべき日本の伝統文化・芸能。その灯が絶えぬことを切に願うものである。

 

某月某日

 日本最大のレシピ動画サービス「クラシル」を開発運営するdely株式会社に堀江裕介社長を訪ねる。2016年から始まったこのサービスだが、三年余りで急拡大し、いまや3万2千本を超える自社制作レシピ動画をアプリをダウンロードした2000万人が閲覧している。料理名や食材で検索すれば、1分間の動画から簡単でおいしい料理や献立のアイデアが見つかる。例えば、冷蔵庫にある食材「ニンジンと玉ねぎと豚肉」で検索すると61件のレシピ動画が。一部は有料閲覧だが、小気味よいテンポで観ているだけでも楽しく、実際に作ってみたくなる。料理好きが増えてすそ野が広がれば、本格的なレシピ本の販売拡大に繋がることは十分期待できる。

 

 堀江裕介さん、27歳独身である。2度の失敗を経てこのサービスを考案。ベンチャーキャピタルから出資を募り、初年度に数十億を投下したテレビ広告で一気に認知を拡げたという。肝っ玉の太さは若さゆえか、いやはや大したものよと感心することしきり。

 

某月某日

 週末、半年ぶりにフィットネスクラブへ行く。先週号の小紙トップインタビューの折に、私のふくよかな?腹回りを見たセイノーホールディングスの田口義隆社長から、ゼーゼーハァハァ言わない程度の運動を週2回30分した方がいいと言われたことがきっかけ。なんでも末端の毛細血管が広がることで心拍数がどんどん下がるらしい。高橋尚子選手の現役時代は心拍数が35だったとも。脂肪燃焼効果が上がり痩せるらしい。仰せの通りトレッドミルで傾斜をつけて時速6 kmの早歩きを40分。キツい。隣のガイジンが親の仇でも追うかの如く激しいランニングをしている。ウォーキングの後、マシンで筋トレを始めるが、そこでもガイジン②が絞り出すような唸り声で100㎏はありそうなバーベルを持ち上げている。お二人の鬼気迫る様子にこちらまで息苦しくなって早々に退散する。

 

 夜は毎年恒例、地元オヤジの会で近所の「河豚鮮」に。「極上天然とらふぐコース」(てっさ・唐揚げ・てっちり・雑炊)6500円はお値打ち。ビールとヒレ酒、継ぎ酒を重ねて、雑炊の前には痛風の敵、白子焼きに舌鼓を打つ。昼間燃やしたカロリーをたっぷり補充すること、ちょっと古いが、「倍返しだぁ」。

【文化通信社 社長 山口】