【出版時評】若い人を惹きつける「本屋」

2020年2月10日

 大学で出版をテーマにした授業を受け持っているが、最終レポートとして、実際の書店を訪ねる課題を出している。その学校は都内にあるので、池袋や新宿などターミナルの大型書店のほか、埼玉県や群馬県などの地域書店やショッピングモールのインショップ書店などが多い。

 

 提出されたレポートには、初めてじっくり書店を見たといった書きっぷりのものがある一方で、もともと書店が好きで通っていたことがわかる文章もある。その中で登場する比率が高いのがTSUTAYAと蔦屋書店だ。

 

 特にカフェがあっておしゃれな蔦屋書店の評価は高い。旧来型の書店は中高年の客が多い(といっても絶対数は少ない)のに対して、代官山をはじめとした蔦屋書店系は多くの若者が来店しているというのは、彼らの新鮮な目から見たレポートだ。

 

 その一つ、二子玉川家電蔦屋が開いた「本屋博」は、出店者も来場者も若い人が多かった。防寒着に身を固めながらも熱心に、かつ楽しそうに陳列された本を眺め、店主と話している姿が各ブースで引っ切りなしに見られた。

 

 「本屋」をテーマにしたフェスにこんなにも人が来るのかと、出店者も驚いていた。売り上げも予想していた以上だという声も聞かれた。書店の経営が厳しく、その数が減り続けているとはいえ、「本屋」はぜんぜん終わっていないと感じる。

【星野渉】