【出版時評】伸びる市場と減る売り場

2020年2月3日

出版市場がプラスになったのは、2004年を除くと、いわゆる「出版不況」の入り口だった1996年以来のことだ。もちろん、電子コミックが成長したおかげであるとはいえ、電子はまだ当面は成長を続けるだろうから、「出版不況」は終わったと言えるのかもしれない。

 

 一方、1年間で書店の売場面積が出店と閉店の差し引きで5万坪以上減った。これはアルメディアで統計を取り始めて初の規模だ。昨年5月時点で同調査の書店総面積は126万坪だったので売り場は約4%減ったことになる。

 

 出版社と書店や取次では、見えている風景が違うということだ。さらに、同じ出版社であっても、コミックや強い雑誌ブランドを持つ出版社とそれ以外では全く違う。「出版不況」のとらえ方にも差が出ている。「三位一体」は完全に過去の話となった。

 

 このところ、出版社と書店との直接取引の話が出るのも、こういう視点で考えると当然のことと肯ける。業界全体の構造が、三者(出版社・取次・書店)の調和を保てばそれぞれに利益が配分される形ではなくなったことが、はっきりしてきたからだ。

 

 ただ、電子が伸びるということは、「読む人」が減ってはいないことを示しているし、若い人が小さい"本屋"を開いているということは、書店の魅力がなくなったわけでもない。産業の構造をあわせるしかない。 

【星野渉】