【出版時評】今年の重大ニュース

2019年12月23日

 今年も最終号となった。1月からの重大ニュースを集めるために振り返ってみると、流通・取引に関わるものが多く目に付いた。自分がその分野に興味を持っていることもあるだろうが、やはり大きなうねりが来ているのであろう(重大ニュースは8面掲載)

 

 まず大手取次両社が大きく舵を切った。トーハンは4年間の中期経営計画を始動させ、「マーケットイン型」の出版流通構築に本格的に取り組んでいる。同時に新本社社屋の建設を開始し、「東五軒町」の巨大な本社ビルを取り壊す準備に入っている。

 

 一方、日本出版販売はホールディングス体制に移行した。外から見えにくいが、その中で出版取次事業の厳しさはより露わとなり、改革を加速させることになるだろう。同時に海外事業やコンテンツ事業といった〝取次〟的とは思えなかった事業も、これからは成長の原動力になるかもしれない。

 

 小売側ではTSUTAYAが本格的なセントラルバイイングへの移行を始めている。その一方で蔦屋書店はコンシェルジュという専門家に仕入権限を一任し、人の力による棚作りを進める。

 

 イギリスで大手書店を再生させたジェイムズ・ドーント氏の手法が「チェーン店の仕入れの強みを持つ独立系書店の集合体」と評されたが、そういう方向を目指しているのだろうか。来年もいろいろなことが起きそうだ。

(星野渉)