【出版時評】本屋で転機をつかみ、本の世界もり立てる

2019年11月18日

 今年の「本の日」に合わせて行われた「ブックカバー大賞」には200件を超える応募があり、その中から坂口香南子さんの「本の木」が大賞に選ばれた。この賞は昨年の「本の日」に合わせて、茨城県のブックエースが企画した。このときも、同社の予想を超える全国から135件の応募があった。

 

 今回は実行委員会のイベントとして全国規模のキャンペーンを展開。選考も実行委員会の矢幡秀治会長(日本書店商業組合連合会会長、真光書店)をはじめ、玄光社『イラストレーション』、新潮社『芸術新潮』、誠文堂新光社『アイデア』、美術出版社『美術手帖』の各編集長が務めた。

 

 「本の日」を提唱した大垣書店・大垣守弘氏が和昌会で語ったところによると、作者の坂口さんは、仕事に悩んでいた若い頃、毎日のように仕事帰りに書店に足を運び、そこでみていた絵本をきっかけに、子どもの頃に好きだった絵を描くことに取り組むようになったという。しかも、その書店が大垣書店の店舗だったという落ちがつく。

 

 作品は当初、実行委員の間ではあまり注目されていなかったが、編集長の選考委員は全会一致で選んだという。確かにブックカバーにはあまりない、色鮮やかで柄の大きなイラストだが、お客に喜ばれたという書店もある。本屋が人生の転機となった人が本の世界をもり立てる良いエピソードだ。

(星野渉)