【出版時評】インプリント時代の到来か

2019年11月11日

 メディアドゥホールディングスが新事業として「インプリント事業」を開始することを発表した。これまでも多くのM&Aでグループの事業を拡大してきた同社だが、出版社を傘下に抱える方向性を打ち出したことになる。

 

 同社は携帯電話の販売やコンテンツ配信サービスなどから、電子書籍の取次事業を拡大、出版業界が産業革新機構と設立した出版デジタル機構や、大手電子取次ビットウェイなどをグループに加えてきた。今回はポプラ社の子会社だったジャイブを買収した。

 

 インプリントとは、欧米の出版業界における出版社のグループ化のことを指す。大手出版社が中小規模の出版社を買収し傘下に収めつつ、それぞれのレーベルは維持して独自の出版活動を続けるスタイルだ。特にアメリカではこうしたグループ化が進行し、多くの出版社がペンギンランダムハウスやサイモン&シュースター、ハーパーコリンズなど5つの巨大出版グループに集約されると言われる。

 

 日本のような取次システムを持たない国では、商品の出荷や返品受け入れなど物流、請求などの決済、取引先の信用管理などを出版社が行うため、小規模出版社が大手の仕組みを共用するインプリントが進行したのであろう。

 

 物流やシステムといったインフラは共同で利用するほど効率が良い。日本にも本格的にインプリントの時代が来るのだろうか。

(星野)