【出版時評】持続可能な社会のために

2019年10月21日

 台風19号による大雨や河川の氾濫による死者は、これまでに80人近くにのぼり、出版業界も書店の浸水被害などに見舞われた。千葉で大規模で長期にわたる停電を起こした15号といい、このところの台風は、かつてのイメージを超える被害をもたらしている。

 

 台風が通過した12日は終日、東京都内の自宅にいたが、私自身これまでこれほど激しくかつ長時間にわたる雨は経験したことがないと感じた。たかだか50数余年の経験なので地球規模の時間で見れば意味がないのかもしれないが、報道などで「観測史上初」などと言っているのを見ると、やはり環境破壊が要因なのではないかと思わされる。

 

 まさか人に地球規模の影響を及ぼすことができるのかという気もするが、ジャレド・ダイアモンドの『文明の崩壊』は、生物の中で人間だけが環境を変えることができ、その影響で滅びた文明がいくつもあると例をあげている。

 

 出版業界をみると、確かに環境破壊に警鐘を鳴らしたりしている本は数多く刊行されている。しかし、自らの事業でどこまでそれを意識した取り組みが行われているのかというと、寡聞にしてあまり聞いたことがない。

 

 多量の返品に伴う紙の廃棄や運送への付加、用紙や判型の不統一など、むしろ環境に負荷をかけることが多々目につく。業界の将来構想に「SDGs」の発想も加えなければならないだろう。

 

(星野渉)