【出版時評】メーカーとして物流をどう考えるか

2019年7月22日

 文化通信社は7月19日、出版流通に関する緊急セミナーを開催した。雑誌流通網をベースに築かれてきた取次システムによる出版流通が危機に瀕している現状を共有し、今後起こり得ることや選択肢などについて、トーハンの近藤敏貴社長をはじめとした方々に報告していただいた。


 そんな中、物流現場で問題になっている「コンプライアンス」(法令遵守)と発売日についての話があった。


 物流現場では、長時間勤務や、夜間配送などドライバーの負担を減らし、安全性を高めるために乗車時間などの制限が強まっている。高速道路での大型車による悲惨な事故などが背景にある。


 そんな中、出版物の輸送がコンプライアンス上の問題を抱える原因のひとつに、発売日設定があるというのだ。発売日が設定されている雑誌は、コンビニエンスストアには深夜から早朝にかけて届けなければならないなど配送日や時間が決められており、それを守るため無理をせざるを得ないという。


 そんな中、もし事故が起きたら発売日を指定した側が責任を問われることはないのか。多くの業界では、想定されていた物流現場の人手不足などの課題に対して、数年前からメーカーが様々な改善に取り組んでいるという。出版物のメーカーとして出版社がどこまで物流を意識しているのか。今まさに問われている。

(星野渉)