【出版時評】大きい方が有利な時代か?

2019年7月8日

 徳間書店は同グループのTSUTAYAと実施している返品枠を設けた新たな取引方法を、他の書店にも広げるという。面の展開にしていかないと、システム開発などのコストを吸収しにくいし、返品減少の効果も薄いからだ。

 

 そして、同社の取り組みと、ポプラ社が大手取次グループ傘下の書店と始めた「低返品高粗利」は、ほぼ全商品を対象にしている点が共通している。これも、効果を上げるためには「点」ではなく「面」にする必要があるからだ。

 

 これまでも業界で、単品やジャンル限定での試みは何度か繰り返されてきたが、スポットで終わっていた。「面」での展開は、各社の本気度の現れだ。

 

 返品率を大幅に引き下げることで書店の利益率を高める提案は、書店側が高い精度で発注することが前提になる。そのために新刊も「見計らい配本」ではなく、事前発注しなければならない。

 

 アメリカで600店舗以上を展開するバーンズ&ノーブルでは、全店の新刊を発注する本部バイヤーは10人程度。ドイツ最大の独立系書店オジアンダーは54店舗の新刊を6人のバイヤーが選ぶ。こうした国は、日本で取次が持つ配本機能をそれぞれの書店が持っているということだ。

 

 こうした仕入方法は大手チェーンほど効率が良く、有利な条件を引き出しやすい。書店はそのことを想定て身構える必要があろう。

(星野渉)