【出版時評】キャッシュレスのインパクト

2019年1月18日

昨年6月、当社の海外視察で北京を訪れて、なにより驚かされたのはキャッシュレスの進みようだった。店舗やタクシーはもちろん、自動販売機から露天のスイカ売りまで、QRコードとスマホアプリで支払われる。

 

そんな状況が、もうすぐ日本でも現実になりそうだ。消費税増税と来年の東京オリンピックに向けて、政府もキャッシュレス化を進めようとしている。それに伴って、各企業も準備を進める。当然、書店も当事者になる。

 

手元にデータはないが、書店の決済は現金比率が高いといわれる。客単価が1000円程度と低いので、客がクレジットカードなどをあまり使わないことや、粗利益率が低いため、書店側も手数料がかかる決済手段を歓迎しないなどの理由が考えられる。

 

しかし、他の小売でキャッシュレスが進行すれば、対応していない店は敬遠される可能性もある。「まさか」と思われるかもしれないが、あっという間に公衆電話や電車の切符をほとんど見かけなくなったことを考えれば、そんなに遠い先の話ではないだろう。

 

アルメディアのデータによると、昨年の新規書店は84店にとどまり、書店数のさらなる減少が懸念される。クレジットカードや交通系カードも未対応の小規模書店が多い中で、この変化は増税にもまして大きなインパクトになるかもしれない。

(星野渉)