【出版時評】書店を「動的」な体験の場に

2019年2月18日

今秋、東京の日本橋に出店を予定している誠品生活の担当者・潘幸兒さんが来日し、ギフトショーのセミナーで話した。本を中心に据えつつ、様々な複合業態を生み出してきた誠品だが、特にその多彩なイベント・ワークショップは、書店でイメージするサイン会やトークショーとはひと味違う動的な体験を提供することを狙っている。

 

誠品は、書店や複合書店を本国の台湾をはじめ、香港、中国本土に48店舗展開。今年創業30周年を迎え、中華圏以外で初の出店となる日本橋は50店舗目だ。

 

誠品は、本を売るだけではなく、読者を増やすことを目指しているという。そのために、「静的」な読書体験とともに、「動的」な体験を提供する。確かに、台湾の店で見たキッチンを備えての料理実演イベントなどは、書店の既存顧客以外も集客しそうだ。

 

その日本橋では2月20日から、創業150年を迎える丸善が2回目となる「日本橋BOOKCON2019」を開く。こちらも、「静的」な書店空間で、多くの編集者や著者が「動的」なイベントやワークショップを行う。今回は土曜日も開催するので、通常同店に来店しない人々を呼び寄せることもできそうだ。

 

書店は「待ち」の商売だと言われてきたが、やりようによってはまだまだいろいろなことができる。これこそリアルな店が持つ可能性のひとつであろう。   

(星野渉)