【出版時評】新年度、そして改元の節目

2019年4月1日

本日から新年度という会社も多いだろう。組織や配属が変わり、新人を迎え、新たな1年が始まる。さらに、来月にはいよいよ平成が終わり、新たな元号が始まる大きな節目の時でもある。

 

平成が始まった1989年は、消費税が導入された。消費税込みの価格が「定価」という内税を選択した出版業界は、旧定価商品の大量返品や断裁など混乱を経験した。しかし、時代はバブルの余韻が色濃く、雑誌の販売や広告は全盛期を迎えつつあった。

 

当時といまを比べると、まさに隔世の感である。スマホやインターネットはおろか、個人でパソコンを持つことすら珍しかった時代だ。一杯入ると、「客注が遅い」「配本精度が悪い」といった〝取次批判〟が飛び出したものだが、誰が今日の取次再編や物流危機を予想しただろうか。

 

あの頃、よく「出版業界は村のようだ」といわれた。世間の景気が良くても悪くても、出版業界はあまり影響を受けず、変化をしない村社会だというニュアンスだったが、いま考えるとなんとも根拠のない思い込みだった。

 

昔は疫病や飢饉があるたびに改元していたようで、これはあくまでも恣意的な節目ではあるが、新年度と同様に、これまでを振り返り、これからのことを考える機会にはなる。今後を考えるため、少し長いレンジでこの業界の変化を見つめ直してみるのも良いだろう。

(星野渉)