【出版時評】アメリカで大手取次が書店向け卸しを停止

2019年5月13日

アメリカで第2位の取次であるベーカー&テーラーが、書店向けの書籍卸サービスを停止すると発表した。2月にはドイツの大手取次KNVが破産を申請したばかり。欧米でも取次業界再編の動きが激しいようだ。

 

ベーカーは、アメリカでイングラムに次ぐ書籍卸業者。アグレッシブで積極的なイングラムに比べると、オーソドックスなスタイルで、図書館ルートに強いという印象がある。日本でも紀伊國屋書店やクレヨンハウスなど、いくつも取引先があるはずだ。

 

今年年明けには、イングラムがベーカーの書店卸部門を買収するという話が流れていたが、5月1日になって、16年にベーカーを買収したフォレット社が、ベーカーの書店向けサービスを7月中旬で終了すると発表した。

 

フォレット社は米国、カナダをはじめ140カ国で9万以上の学校と学校図書館にサービスを提供している企業で、6000の公共図書館と取引があるベーカーを傘下に、図書館市場に集中しようというのであろう。

 

ベーカーのサービス終了を受け、書店組合は急遽、イングラムや多くの出版社と協議し、ウェブサイトなどで会員に向けて今後の流れや対処方法を知らせ、イングラムは早々に独立系書店をサポートする方法を表明した。今後の出版業界をどう読み解くのか。世界的な視野で見ていく必要がありそうだ。

(星野渉)