【出版時評】新規顧客を取り込むには

2019年5月20日

ポプラ社の千葉均社長が、出版業界ほど新規顧客開拓に"お金"を使っていない業界は珍しいと話していた。子どもへの読書推進活動は、業界にとどまらず広く行われているが、新たな本の顧客を増やす取り組みは、もっとやりようがあるのかもしれない。

 

「おしりたんてい」のキャンペーンでは、セブン︱イレブン店舗での先行発売に、書店などから疑問の声も上がったが、結果として同シリーズ新刊もよく売れ、書店への流入もあったという。はじめから書店への誘客を意図した企画だったからであろう。

 

本を1冊買った顧客にもう1冊購入してもらうのか、1冊も買ったことのない顧客に1冊買ってもらうのか。おそらく前者の方が容易に思えるが、市場の拡大を考えればあえて後者にチャレンジしなければなるまい。スマホ経由で様々なコンテンツが入手できる環境ではなおさらだ。

 

書店のライバルは、本を売る同業やコンビニだけではない。ネットで本を売るアマゾンをはじめとしたECサービスはもとより、顧客の時間を本と奪い合うあらゆるコンテンツが競争相手になる。

 

どうやってこの競争に勝ち抜くか。書店の店舗を魅力的な場所にするのはもちろんのこと、扱う商材である本のファンも増やさなければならない。そのために「出版業界」や「読書」の外に打って出なければならない時代なのだろう。

(星野渉)