【出版時評】出版流通の考え方を変えるとき

2019年5月27日

日本出版販売が取引書店や出版社を集めて方針を発表する「日販懇話会」で、平林彰社長は同社の取次事業が赤字になったと発表した。昨年の中間決算で既に上半期に取次事業が赤字になったことを発表していたが、主要事業が赤字になるということは、企業として由々しき事態である。

 

懇話会で平林社長は、売上高に占める物流コストの比率が、2014年に比べて10ポイント上昇したと報告。運賃だけで18年度は35億円を超え、14年度の経常利益33億円に匹敵する額になったことを明らかにした。運賃の上昇で経常利益が吹き飛んだ形だ。

 

さらに、高知県では運送業者がコンビニエンスストアへの輸送を返上し、後継業者が見つからないという。しかも、業者から提示される運賃が宅配便より高くなり、現在は緊急避難として宅配便で届けているというのだ。同県の輸送には特別な事情もあるというが、安さを誇った出版輸送の根幹が崩れようとしている。

 

こうした事態に対して、日販とトーハンは物流の協業を進める。平林社長はさらに他業界との共同配送も視野に入れているという。また、出版社に対しては業量の平準化や定価の値上げを求めている。

 

書店にほぼ毎日荷物が届き、安いコストで書籍を1冊から配送するという流通網が根幹から変わろうとしている。同一地区同日発売という考え方も変えざるを得ないのではないか。

(星野渉)