吉川英治国民文化振興会と講談社は4月10日、吉川英治賞の贈呈式を東京・千代田区の帝国ホテルで開催した。第60回吉川英治文学賞は朝井まかてさん『どら蔵』(講談社)が受賞。第11回吉川英治文庫賞は石田衣良さんの『池袋ウエストゲートパーク』シリーズ(文春文庫)、第47回吉川英治文学新人賞は伏尾美紀さんの『百年の時効』(幻冬舎)、第60回吉川英治文化賞はアダチ版画研究所、伊藤史人さん、狩俣繁久さんがそれぞれ受賞した。

左から受賞した狩俣さん、伊藤さん、アダチ版画研究所・田﨑雅志取締役社長、伏尾さん、朝井さん
はじめに、吉川英治国民文化振興会の野間省伸理事長(講談社)が「世界を平和に導く鍵となるのは、文化や文学といった人々の心を豊かにするもの。そのような文化や社会貢献に取り組んできた方に本賞を贈ることが当財団の使命」とあいさつ。続いて各賞選考委員の講評、受賞者によるあいさつが行われた。

あいさつする野間理事長
吉川英治文学賞選考委員の浅田次郎氏は朝井さんの『どら蔵』を評して「時代小説の読者が願う通りに、昔の時代に抵抗なくいざなってくれる。そのテクニック、言葉の選び方が秀逸」と称えた。

選考委員の浅田氏
吉川英治文学新人賞選考委員の辻村深月氏は『百年の時効』について「事件の捜査を通して昭和、平成、令和と視点を行きつ戻りつさせながら、一切の混乱なく描かれているのはとんでもない力量」と高く評価した。

選考委員の辻村氏
吉川英治文化賞選考委員の田中優子氏は「人知れずこの社会や日本の文化を変える、あるいは支え続ける方たちの業績を、多くの方が知るきっかけとして貴重な賞。今回もとても素晴らしい方たちを選ぶことができた」と語った。

選考委員の田中氏
受賞者の朝井さんは吉川英治氏の随筆の言葉を紹介しながら「文章はこんなふうに人生の原風景を誰かと共有し、引き継いでいける。今つくづくとその幸福を感じる」とスピーチし、「運だけで生きてきたが、その運はたくさんの人に支えられてきたもの」と関係者や家族に感謝を表した。

吉川英治文学賞を受賞した朝井さん
吉川英治文庫賞を受賞した石田さんは体調不良のため欠席となったが、「シリーズの新作を心待ちにしてくれている腐れ縁の読者の皆さん、ありがとう。22巻でまたお会いしましょう」とのコメントが文藝春秋・花田朋子氏により代読された。
吉川英治文学新人賞を受賞した伏尾さんは「編集、校正をはじめ、作品に関わったたくさんの方のおかげで今、この場に立てている」と感謝の意を述べ、「受賞を励みにさらにステップアップして、またこの晴れ舞台に戻ってきたい」と語った。

吉川英治文学新人賞を受賞した伏尾さん
最後に、木版印刷の技術を保存・継承し、後継者育成にも尽力するアダチ版画研究所、視線入力のアプリ開発で重度障害者の支援を続ける伊藤史人さん、『大琉球語辞典』開設に尽力するなど琉球諸語「しまくとぅば」の調査・継承に貢献した狩俣繁久さんが、吉川英治文化賞受賞の喜びを語った。
