文化通信社
第5回「ふるさと新聞アワード」
【授賞記事・紹介】
※記事および紙面の著作権はすべて当該新聞社に帰属しています。
◎最優秀賞

東濃新報(岐阜県多治見市)
連載「昭和100年 紙面と時代と東濃と」
2025年2月7日付など
<概要>
昭和100年に当たる2025年、同紙のバックナンバーから1年ずつ、時代を振り返 る「昭和年めくりコラム」を掲載。時代や地元、同紙の歴史を象徴するような出来事を毎号紹介している。
<審査員・評>
昭和100年を記念した「年めくりコラム」ということで、地域の出来事が非常にコンパクトに綴られていて、読みやすく面白い連載でした。政治、社会、文化といったようにジャンルを限定せず、「テレビ放送」「美濃焼業界」「人口水増し」「英字新聞」「岐阜国体」「バス転落事故」「武者行列」など、内容が多岐にわたっていたことも、興味深かったです。『東濃新報』の歴史はもちろん、当時の記者たち、そして本コラムの執筆者の思いも垣間見え、感慨深く拝読させていただきました。【加来耕三】
◎優秀賞

荘内日報(山形県鶴岡市)
連載「庄内の食と藤沢周平の景色」
2024年9月14日付など
<概要>
山形県鶴岡市出身の作家、藤沢周平。故郷の食べ物を愛した藤沢は、自身の作品の随所で庄内の食を描いてきた。作品を引用しながら、庄内の名産物を使用した食文化を紹介する。
<審査員・評>
基本的には地方紙でしか読めない記事かどうか、ということを基準に選んでいます。この連載は郷土の食卓と文学の原風景を融合させた至福の文化探訪シリーズだと思いました。山形・庄内地方の豊饒な食文化を、藤沢周平作品の名シーンと重ね、庄内の食文化を再発見する秀逸な連載です。
個人的にも藤沢周平が大好きです。作中での食の描写に触れると、いつも美味しそうだなあ、と思いながら読んでいたのですが、その答え合わせをしているかのような内容に大変感銘を受けました。【高橋俊宏】
庄内の地域の人たちは藤沢周平を実に大切にしている。藤沢作品は次々に映像化され、現在も読み継がれているのも理由だが、それ以上に藤沢周平が描く故郷としての庄内が今でも心を捉えるからだろう。
藤沢周平は作品の中で慣れ親しんだ味を絶妙に描いている。私も思わずつられて、藤沢周平ゆかりの温泉宿で、藤沢周平が実に旨そうに描いた鱈汁と地酒を堪能したこともある。地域固有の食材を書き記したという点も愛される理由だろう。一連の記事で、藤沢周平の小説やエッセイから食の描写を縦横無尽に引用しているのも、愛のあらわれだ。
本連載は郷土愛を育て、シビックプライドの醸成まで寄与するものであり、ふるさと新聞の役割を十分に果たしていると感じた。【山崎まゆみ】
◎優秀賞

熊野新聞(和歌山県新宮市)
連載コラム「こんな事をこども達に話した教育者がいた」
2024年9月3日付など
<概要>
AIやタブレットの導入で、学校教育現場は急速に変化しているが、学校教育の持つ役割は昔から変わらない。事物そのものに興味を持つ、知的好奇心に満ちたこども達を育てるために、校長先生は「考える力」を育むエピソードを、生徒たちに話していた。
<審査員・評>
とにかく、抜群に面白い記事でした。「この世で一番速いものはなんですか」「『小数』の割り算なんか必要あるの?」といった設問がまず秀逸で、一気に引き込まれました。回答内容は、重厚感がありつつも面白く、感心しながら読み進めました。執筆者の村上さんのような先生と出会えたなら、子どもたちは「学ぶ」ということの意義や楽しさを、おのずと実感できるのではないかと思います。全国紙や小学生新聞でも、ぜひ掲載していただきたい素晴らしいコラムでした。【加来耕三】
学校教育でもデジタル化が進み「AI」や「タブレット」の導入が急速に進む中、そうしたツールを使う便利さの裏側に、自分で考える前にすぐに調べて答えが出せたような気になってしまうことが懸念される。(これは子供に限らず、大人も一緒)そんな中、自分で「考える力」の大切さを子どもが関心を持ちそうなストーリーと共に伝えてくれる教育者がいてくれることはとても頼もしい。【横川正紀】
◎優秀賞

あやべ市民新聞(京都府綾部市)
読者投稿コーナー「教えて『一人暮らし』」
2025年3月14日付など
<概要>
誰かと暮らしていても、いつかは一人暮らしになる可能性がある。高齢の単身世帯も増えている中、ある一人暮らしの読者から手紙が届く。一人の読者の疑問から始まった企画は、また別の読者を通してつながりを生み出していく。
<審査員・評>
ひとりの高齢女性の投書をきっかけに「教えて『一人暮らし』」というコーナーが始まり、読者間に素敵なつながりを生み出した点が素晴らしいと思います。一方通行の発信ではなく、新聞が“人々が語り合う場” として機能していることにも感銘を受けました。読者から寄せられた投稿の数々は、まるで古くからの友人のように女性の悩みに寄り添うものばかりで、とてもあたたかい気持ちになりました。この記事を通して、身近な人を思いやる気持ちが芽生え、いつもより少し優しくなれるような気がし
ました。【小山薫堂】
まるでラジオ番組に寄せられたお手紙のようでDJが読み上げる姿までが想像できるような市民の方から届けられたリアルな投稿。それをきっかけに展開された記事だが、核家族、高齢化が進むこの時代に同じような悩みを抱えている人はきっと多いはず。このコーナーがみんなで意見交換できる交流の場になり地域の人のよりどころの1つになると良い気がした。【横川正紀】
◎準優秀賞

北都新聞(北海道名寄市)
連載「市史編さんノオト」
2024年7月6日付など
<概要>
地元・名寄市の市史編さん室職員の担当者が交代で執筆する連載。市史をたどり、特定のテーマについて現在までの移り変わりを紹介。古いものでは明治時代まで遡るなど、豊富な史料を活かした解説を展開する。
<審査員・評>
市史編纂室の職員の方が交代で執筆されたと書かれており、かつ、1枚目が平地の開拓に関する記事だったことから、どちらかというと、お堅い連載なのかと思って読み始めましたが、「公衆浴場」「パチンコ店」「児童公園」「コンビニ」「ピアノ」といった身近なトピックも多く、各回とも読者の関心を引く内容だったと思います。
もちろん、新聞記者とは異なる語り口ではあるのですが、さすが市史編纂室の方々ということで文章力が高く、執筆者それぞれの個性も光り、個々のお人柄が感じられる部分もあって、大変趣深い連載でした。【加来耕三】
◎準優秀賞

室蘭民報(北海道室蘭市)
連載「『ホテルDATTEL』誕生への道」
2025年2月25日付など
<概要>
閉鎖したホテルの土地建物を使用し、新たなホテルのオープンを目指す地元銀行の人々。コミュニティ創出の場として地域の人々に愛されてきたホテルを存続させるため、前例のない再生に挑戦する。
<審査員・評>
「地元のためにこんなに尽力してくれる銀行があるんだ!」と感銘を受けた記事。閉鎖される前からこのホテルのことをよく知っている方が引き続き再生に尽力されたこともあるが、厳しい意見がある中、また前例がない中でそれに屈することなく地域の皆さんと繋がりを持ちながら再生へと導くストーリーはとてもドラマティックで読んでいてワクワクした。再生したホテルのこれからや地域のその後の様子にも注目したい。【横川正紀】
◎準優秀賞

東海新報(岩手県大船渡市)
「大船渡市大規模林野火災」についての一連の報道
2025年2月20日付など
<概要>
地元を襲った大規模林野火災について、「第一の火災」から制御不能の大規模火災に広がっていく様子、避難の状況などを詳細に報道。東日本大震災の教訓を生かした取り組みも取材。
<審査員・評>
手に汗握るルポだった。山火事が始まった時点では扱いはさほど大きくなく、焼失エリア拡大に伴い記事が1面に移る過程がリアル。火勢の状況、新たな大規模火災、避難、長期化して焼失面積が毎日増え続け、徐々に被害の大きさが判明。降雨にも助けられ、ようやく鎮火し、避難解除されて生活は戻り、復興という道のり。これらが丁寧にかつ詳細に記されている。現場直報と言うべき緊張感あふれたこの記事をリアルタイムで読みたかった。
大船渡市大規模林野火災経緯を俯瞰して読むことができた総括した記録とデータも重要だ。全国で報じられるのは被害のほんの一部だから、地域に寄り添い、現場でしか書けない記事をアワードで高く評価し、ふるさと新聞の意義を世に問いたい。【山崎まゆみ】
◎準優秀賞

あぶくま時報(福島県須賀川市)
「同級生とまた走りたい」中学生がクラウドファンディング
2024年7月23日付
<概要>
右足が義足となってしまった元同級生と再び一緒に走るため、クラウドファンディングを開始した中学生。仲間への思いから始まった支援の輪は、さらなる広がりを見せる。
<審査員・評>
一般的なマスメディアではまず取り上げられないような、地域に根ざしたニュースをしっかり伝えつつ、この記事がクラウドファンディングへの寄付につながるよう、QRコードまで掲載している点が素晴らしいと思いました。
記者の方がこのネタをどのように見つけたのか、とても気になります。メディアの使命とは、光のあるところに行くことではなく、光を当てることだと思っています。この記事は、光の当て方に温もりが感じられ、とても良いなと感じました。【小山薫堂】
◎準優秀賞

柏崎日報(新潟県柏崎市)
連載「柏崎原発再出発 現場はいま」
2025年3月3日付など
<概要>
福島第一原発事故を受け、長期運転を停止している柏崎原発。21年には複数の不祥事も発覚し、対応に追われた。再出発を目指す中、原発で働く地元出身者の奮闘や、運転再開への思いなどを記録した。
<審査員・評>
長期運転停止中の柏崎原発の再出発をテーマに、現場で働く「人」に注目したシリーズ企画。高校3年の時に職場見学したことをきっかけに入社した地元出身の作業員。広報担当として地域との双方のコミュニケーションを重視する刈羽村出身者。福島第一原発の事故の際には、現場の事故収束に当たっていた現所長――。20代から60代まで幅広く取材していることに好感が持てた。
原発で働く人はそれぞれに想いを持っている。仕事に対して、「ひとつひとつ着実に積み上げていく」というシンプルな言葉が心に沁みた。「地域の安全を守らなければならない」という懸命さも伝わる良質な記事だった。
本コメントを作成した今日、柏崎刈羽原発6号機が再稼働に向けて施設面の準備が整ったというニュースが出た。新潟県長岡市に実家がある私としては読むことができて良かった。【山崎まゆみ】
◎準優秀賞

夕刊三重(三重県松坂市)
自身のルーツ探り、松坂へ 「私が靖子です」本紙に連絡
2025年5月10日付など
<概要>
自身のルーツを探しに、カナダから来日した女性。祖母の記憶を頼りに松坂市に訪れ、情報提供を呼び掛けた。後日、報道をきっかけに親戚を発見し、69年ぶりの交流を果たす。
<審査員・評>
まず、このネタに出会えたのは、日頃から地域に根ざして取材活動を続けてきた夕刊三重新聞社ならではのネットワークがあったからだと思います。多くの人が共感できる物語性のある記事としてまとめ上げたことに加え、一面という最も目立つページに取り上げた思い切りのある紙面構成が、情報提供を呼び込む大きなきっかけになったと感じます。
さらに、数日後の記事では、遠く離れた家族が新聞を通じて繋がる様子が、家系図などを使いながら分かりやすく整理されており、心温まる素晴らしい記事だと思いました。【小山薫堂】
◎準優秀賞

紀伊民報(和歌山県田辺市)
白浜町「アドベンチャーワールドのパンダ」に関する一連の報道
2024年9月19日付など
<概要>
30年パンダを飼育してきた白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」。日々パンダの話題を紙面で扱ってきたが、全4頭の返還が決定。中国へ旅立つその日まで、写真とともに報道を続けた。
<審査員・評>
2025年6月28日に中国へ全頭返還された一大ニュースを、紀伊民報は連日深掘り報道。返還発表直後から駆け込み来園者の行列、宿泊予約2〜3倍増の経済効果、町長の「パンダにすがらない」決意と観光業者の不安、歓送セレモニーでの涙の別れまで、多角的に追いかけた点を評価します。まさにふるさと新聞の鏡。
このシリーズは、地方紙の真髄—住民の喜び・悲しみを代弁し、活力ある地域づくりを促す—を体現。全国のふるさとジャーナリズムの模範だと思いました。【高橋俊宏】
◎準優秀賞

宇部日報(山口県宇部市)
連載「能登半島地震 被災地を訪ねて」
2024年7月8日付など
<概要>
2024年の元日に発生した石川県の能登半島地震の被災地を、山口県宇部市の地域紙が取材して書いた連載。誰かに伝え、現実を知ってほしいという住民の声を聞きに行くため、記者は歩き続ける。
<審査員・評>
さまざまな手段で情報を得ることができ、消化できないまま次の情報を目にしては記憶が上書きされる昨今。そんな中でもこの記事のように、現状を正しく把握し、今後についてしっかり考えなくてはいけない重要なこともたくさんあるわけで、まずは記憶にとどめるために半年後に能登半島地震の記事が再び掲載されたのは良いことだと思った。
定期的に記事で取り上げられることで、読者はその問題に向き合えるきっかけが与えられ、その先のアクションが起こせるはず。また地元の方の「すぐに忘れられてしまうのでは…」という不安も少し和らぐことを願う。【横川正紀】
◎準優秀賞

奄美新聞(鹿児島県奄美市)
連載「伝える 大島海峡・戦争遺跡」
2024年8月13日付など
<概要>
奄美大島南部にある大島海峡には、砲台跡などの戦争遺跡が多く残っている。戦後約80年が経ち風化が進む中、地元高校では遺跡に関わることで歴史を語り継ごうとする取り組みが行われている。
<審査員・評>
戦争の記憶が風化していく中で、大島海峡の戦争遺跡に関する様々な活動によって、歴史を語り継ごうとする地元の高校の取り組み。町教育委員会は52の近代遺跡として整理し、パンフレットとマップを作成。地元の中学生と高校生に配布した。「歴史を伝える本物の構造物が町内に残る意義、遺跡の重要性を知って欲しい」という言葉が核心を突いている。
このように地道だが重要な活動は高く評価されるべきだが、案外、地元でも知られていない場合も多々ある。地域の人に伝えるべきことを地域の新聞がきちんとシリーズで取り上げて記録に残すことこそ、ふるさと新聞の大きな役割ではないだろうか。1点、高校生の声も聞いてみたかった。【山崎まゆみ】
◎準優秀賞

宮古毎日新聞(沖縄県宮古市)
ありがとうミスター長嶋! 島の青年の行動に応える
2025年6月27日付
<概要>
宮古島ではかつてプロ野球球団がキャンプ地として使用し、トレーニングを行っていた。キャンプ地の誘致の背景には、島の活性化のために行動する青年たちと、「ミスタープロ野球」長嶋茂雄氏の講演があった。長嶋氏から受け取った言葉のバトンを受け継ぎ、77歳となったかつての青年は挑戦を続ける。
<審査員・評>
離島の純粋な夢と巨星の温かな応答を描いた、心揺さぶる人間ドラマ。「ミスタープロ野球」長嶋茂雄氏(2025年6月逝去)の訃報を受け、宮古島の若き青年が長島氏の 講演誘致に奔走した感動のエピソードを追ったハートフルな記事。
単なる追悼を超え、希望のバトンを渡す視点がよかったです。青年の「島にプロ野球を!」という情熱が、長嶋氏の「ドンマイ!」精神に応えられ、宮古の野球文化(キャンプ8チーム、地元交流)を育んだ軌跡に繋げて紹介。訃報後の喪失感を、未来志向の活力に転換し、読者の胸を熱くしたのではないでしょうか。【高橋俊宏】
◎特別賞

須坂新聞(長野県須坂市)
「ふるさと納税 返礼品産地偽装問題」に関する一連の報道
2025年3月22日付など
<概要>
須坂市はふるさと納税の返礼品として「シャインマスカット」を提供していたが、産地を偽っていたことが発覚。発覚後の会見から、ふるさと納税の指定除外を受けるまで、連日報道を行った。
※「有識者専門委員会」(6人)で、文化通信社内にある「ふるさと新聞ライブラリー」に毎日届く地域紙70紙の2024年7月1日付から2025年6月30日付の紙面を全て読んでいただきました。その中からそれぞれのおすすめ記事10本を厳選。他の5人が選んだ10本の記事をまわし読み、ポイントで評価。ポイントが高かった上位32本を一次審査通過作品とした。その32本の中で、最も高いポイントを集めた記事に有識者専門委員特別賞を贈る。
◎特別賞

市民タイムス(長野県松本市)
「老舗百貨店・井上本店閉店」に関する一連の報道
2025年4月1日付など
<概要>
松本市の老舗百貨店・井上本店が施設老朽化のため閉店が決定。閉店までの2か月、関係者や地域の人々への取材を重ね、それぞれの想いを記録し、閉店する最後の日まで写真と共に報道を続けた。
※「有識者専門委員会」(6人)で、文化通信社内にある「ふるさと新聞ライブラリー」に毎日届く地域紙70紙の2024年7月1日付から2025年6月30日付の紙面を全て読んでいただきました。その中からそれぞれのおすすめ記事10本を厳選。他の5人が選んだ10本の記事をまわし読み、ポイントで評価。ポイントが高かった上位32本を一次審査通過作品とした。その32本の中で、最も高いポイントを集めた記事に有識者専門委員特別賞を贈る。
<審査員・評>
地元に愛されたお店の閉店記事は、歩んできた歴史や、感謝を伝えることに軸が置かれることが多いですが、本記事では一歩踏み込み、どうしたら百貨店を守ることができたのか、閉店の原因は何なのか、といった点も丁寧にリサーチしています。盛岡市で勢いのある百貨店「川徳」との比較や、コンサルティングの専門家による分析は、未来の松本市へヒントを提示するとともに、同じような課題に直面している他の自治体の人々にも多くの気づきを与える記事だと感じました。【小山薫堂】
