
左から南氏、齋藤氏、山口氏、大原氏
文化通信社は8月26日、新聞や本など活字文化の推進について話し合う「活字文化フォーラム」を東京・台東区の東天紅上野本店で開催し、書店、出版社、販売会社、新聞社など約100人が参加、オンラインでも同時配信した。
※当日の基調講演・パネルディスカッションのアーカイブ動画(フルバージョン)は、文化通信社が運営するオンラインコミュニティ「ほんのもり」で公開しています。
「ほんのもり」=https://honnomori.online/about

「アメリカのインディペンデント書店は命をかけて戦っている」と大原氏
5回目となる今回のテーマは「これから求められる書店の形を考える―増えるアメリカの独立系書店を参考に―」。第一部の基調講演は、アメリカの書店事情に精通する文芸エージェントの大原ケイ氏が「強いアメリカの独立系書店」について報告した。大原氏は「アメリカのインディペンデント(独立)書店の数は、全体の10%だが、読者に勧める、届ける、もっと言えば『ベストセラーを作り出す』影響力がある。そのため出版社も独立書店を大切にしている」とアメリカ独立書店の位置づけを説明した。
そのうえで、「どのように店の個性を出すか、個性を出すために仕入れた本をいかにしっかり売っていくかをアメリカのインディペンデント書店は、命をかけて考え、まさに戦っている」とした。
第二部のパネルディスカッションは大原氏に加え、「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」幹事長の齋藤健氏、文字・活字文化推進機構の山口寿一理事長(読売新聞グループ本社社長)が登壇。進行役はアナウンサーでエッセイストの南美希子氏が務めた。
齋藤氏は「アメリカは、基本的に政府は介入しない方針。大原さんの話を聞き、それが書店でも貫かれているとわかった。一番大事なことは、この地域ではどうすれば売れるのか、どういった本が売れるのかを必死に考え、この店でしか出合えない本をいかに魅力的に提案していくか。店に来てもらうためにはさまざまな工夫が必要で、その積み重ねが成功に近づく。これに尽きる」と強調した。
山口氏は大原氏の講演について、「アメリカの書店事情について詳細な報告が聞けて貴重な機会だった。アメリカは書店も政府からの介入を嫌い、自分たちで頑張ろうという路線。韓国は逆に法律を作り、地域の小規模書店を支援、優遇していくやり方。日本は齋藤さんが大臣の時に陣頭指揮を執られ、書店活性化プランをまとめられた。省庁横断型で既存の政策を総動員で活用する日本らしい方向性だとみている」とした。
また、「大原さんの話の最大のポイントはアメリカで独立系の書店が増え続けているということだが、韓国も増えている。やはり二人が指摘されたように、ここでしか出合えない本を店に並べ、本好きな人たちが集まるコミュニティを作っていくことが大切。日本は『政府の関与』の点では米韓の中間だが、書店自らが個性、特色ある書店を作るという方向を目指すべきだという思いを強くした」と感想を述べた。
会場の参加書店から、在庫管理、万引き対策、省力化につながるRFIDタグの導入促進を業界全体で進める必要性の声があがり、政府やメディアに向けて気運の醸成を後押ししてほしいと要望が出された。山口氏は「ICタグのインフラ整備は私も推進すべきとの考え。何らかの公的な支援が必要な領域だろう」と話した。
(第5回「活字文化フォーラム」の詳細は後日掲載します)