山崎まゆみさん新刊『鎮魂の花火「白菊」』 旅する本屋「街々書林」でトークショー

2025年8月25日

 

展示の写真などを紹介しながら語る山崎さん(写真奥)

 

 河出書房新社は7月28日、エッセイストの山崎まゆみさんの新刊『鎮魂の花火「白菊」 長岡の花火がつなぐシベリアと真珠湾』を刊行した。戦後80年となった今夏の出版を記念して、8月には東京・武蔵野市吉祥寺にある旅する本屋「街々書林(まちまちしょりん)で、写真展と山崎さんを招いたトークショーが開かれた。

 

  山崎さん(文筆業・跡見学園女子大学兼任講師)は、新潟県長岡市出身。内閣府、観光庁、地方自治体の有識者会議に多数参画。著作に『宿帳が語る昭和一〇〇年』(潮出版社)、『さあ、バリアフリー温泉旅行にでかけよう!』、文庫『温泉ごはん』『ひとり温泉 おいしいごはん』『おいしいひとり温泉はやめられない』(いずれも河出書房新社)など多数。NHKラジオ深夜便に出演中。文化通信社の「ふるさと新聞アワード」審査員や、月刊誌『味の手帖』でエッセイ「おいしい♨ひとり旅」を連載中。

 

 新刊は2011年から14年春にかけて行った花火師・嘉瀬誠次(かせ・せいじ)氏への聞き取りをもとに書き下ろした『白菊─shiragiku─ 伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花』(小学館、14年7月刊)を全面的に改稿し、改題した。

 

四六判・並製248㌻、定価2,200円

 

 日本三大花火大会の一つ、毎年夏の「長岡まつり大花火大会(長岡花火)」の最初にあがる白一色の花火「白菊」は、シベリアに抑留され亡くなった戦友への献花として作られたという。山崎さんが、長期にわたる取材によって「白菊」を巡る長岡、シベリア、真珠湾の出来事を描きだしたノンフィクション。

 

 街々書林では、長岡花火、シベリア・ハバロフスク、真珠湾の写真を展示。8月9日には山崎さんのトークショーが開かれ、それらの写真を見ながら、花火「白菊」と花火師・嘉瀬誠次さんにまつわる話や、著書の取材の思い出などを約1時間にわたって語った。

 

 冒頭、山崎さんは今年も長岡花火を地元で観覧したことを報告。「白菊」や04年の中越地震からの復興を願って翌年に打ち上げが始まった「フェニックス」などについて説明した上で、「長岡花火は毎年進化しており、中でも今年が一番すごかった。現地で見ると、体の真ん中の骨が揺れる圧倒的なスケール感がある」と、地元での観覧をすすめた。

 

 同書を書いた思いにも触れ、「(作家という)ものを作る人間として、嘉瀬さんはあこがれの存在。改稿版を出したいと思ったのは、元本を上梓したあと『白菊』をめぐる状況が大きく変化したので、記録しておきたかった。また、『白菊』に込められた鎮魂の意味を、今ならより丁寧に、深く、嘉瀬さんへの共感をより強く抱いて描けると思ったから」と明かした。

 

 最後に、「幼い頃から見てきた長岡花火が私のソウルにはある。だからこそ、知られざるストーリーは絶対に私が書かなければとの思いが強かった」と語り、「私が本を書くとき、後世に絶対残すという思いがモチベーションとなる。花火は一瞬で消えてしまうが、それを題材にした本を残すことができるのが(もの書きとしての)喜びでもある」と感謝した。