朝日新聞社が主催する第29回手塚治虫文化賞贈呈式が6月5日、東京・中央区の浜離宮朝日ホールで開かれた。マンガ大賞『1秒24コマのぼくの人生』(河出書房新社)のりんたろう氏(84)、新生賞『どくだみの花咲くころ』(講談社)の城戸志保氏、短編賞の『ザ・キンクス』(講談社)の榎本俊二氏(56)、特別賞の一般財団法人横手市増田まんが美術財団代表理事・大石卓氏(55)がそれぞれ表彰された。

記念トークショーの様子。左から朝日新聞社文化部の小原篤記者、りんたろうさん、秋本治さん
マンガ文化の発展、向上に大きな役割を果たした手塚治虫氏の業績を記念する賞で、正賞は鉄腕アトムのブロンズ像。副賞として大賞200万円、その他100万円が贈られた。
大賞を受賞したりんたろう氏は手塚作品の「鉄腕アトム」で演出家デビューし、テレビシリーズ「宇宙海賊キャプテンハーロック」、劇場版「銀河鉄道999」などの代表作があるアニメーション監督。受賞あいさつで「84歳の新人で、漫画家ではないりんたろうです」と自己紹介すると、会場が笑いに包まれた。受賞作の『1秒24コマのぼくの人生』は、自伝を描いたもので、フランスのマンガ形式(バンド・デシネ)で描き、「読む映画にしよう」と6年かけて作り上げたという。フランスで出版されて話題を呼び、昨年、日本語版が出版された。

中村史郎会長(左)とりんたろうさん
新生賞の城戸氏は「マンガの神様の名を冠した賞をいただき最高の気持ちです。これを励みにマンガ文化に微力ながら貢献できるよう邁進(まいしん)したい」とメッセージを寄せた。短編賞の榎本氏は「下品なギャグマンガを35年描き続けてきたので、今でも賞を取り消されるのではないかとハラハラしている。トロフィーをいただいたらすぐにでも帰りたい」と話し、笑いを誘った。

中村史郎会長(左)と榎本俊二さん
特別賞の横手市増田まんが美術財団は30年にわたって、マンガ原画のアーカイブに尽力してきた。代表理事の大石氏は「世界に誇る大衆文化をつくり上げたマンガ原画は着実に確実に未来に残すべき文化財。使命感を持ちながら原画を守っている」と話した。

中村史郎会長(左)と大石卓さん
会場には秋本治氏や里中満智子氏ら選考委員、ちばてつや氏や大友克洋氏ら漫画家、出版社幹部や担当編集者、抽選で当選した一般客ら400人が参加。りんたろう氏と秋本治氏が語り合う記念トークイベントも行われ、鉄腕アトムの制作秘話を明かした。