日本出版販売(日販)は、声優や俳優らの「声」と一緒に、日常的な「場所」で、没入感のある「体験」を提供する店頭集客ソリューション「ボイスフレンド」の新企画を、9月6日から入場料のある本屋「文喫」3店舗で、順次スタートしている。それに先立ち同4日、東京・港区の「文喫 六本木」でメディア向け体験会が開かれ、「スタジオ オトバンク」が制作で協力した新企画について説明した。

日販・加藤氏(左)とオトバンク・久保田社長(文喫 六本木で)
「文喫」3店舗を巡回
ボイスフレンドは、例えば自分の〝推し〟の俳優や声優が、文喫内を一緒に巡りながら、その場でしか聞けない言葉を自分だけに語りかけてくれる。株式会社GATARIが提供するMR(複合現実)の最新技術を活用。書店内などの空間をそのまま、イベント会場にすることができる。
今回の企画は、お笑い芸人・かが屋が脚本と声の出演をする「New Store Manager」を提供している。これまでの俳優・声優が出演した過去作とはひと味違い、コントという形式で、笑いながら文喫内を巡ることができる。さらに、初の試みとして 「文喫 六本木」に加え、「文喫 福岡天神」「文喫 栄」にも実施店舗を広げ、巡回する。
音声は録りおろしで、制作はオトバンクの音声コンテンツ企画制作事業「スタジオ オトバンク」が担当した。オトバンクはこれまで、数万点に及ぶ音声コンテンツを制作してきたが、近年、音声コンテンツの制作に関する相談が急増していることから、従来の知見を生かし、あらゆる音声コンテンツのクリエイティブを担う「スタジオ オトバンク」を今年7月に立ち上げた。

スマートフォンとNTTソノリティが提供する「nwm(ヌーム)」のオープンイヤー型イヤホンを装着し店内を歩くと、体験者の行動に合わせて物語が進行する
集客や購買促進に効果
メディア向け説明会では、ボイスフレンドの事業を企画、推進する日販プラットフォーム創造事業本部IPソリューションチームリーダーの加藤隼士氏と、オトバンクの久保田裕也社長が新企画について説明した。
加藤氏は「文喫 六本木」で実施した過去3回の企画で、のべ3000人が参加し、期間中に店舗を訪れた客数、売上はいずれも前年比2倍以上になったことをあらためて紹介した。
出演者が選書した書籍は約1700冊が購入されたほか、オリジナルグッズは約4800個売れた。さらに、企画目当てに訪れて文喫(有料ゾーン)を利用した人は約2000人、喫茶も約1100人が利用した。ボイスフレンド体験者の満足度や再来店意向も、それぞれ90%前後と非常に高くなっている。

物語は入口付近に戻ってきて終わり、そこには物語に出てきた書籍やグッズが並べられている
また、今回は初めて文喫3店舗で実施されるが、今後はほかの書店や施設など幅広い展開も検討していることを明らかにした。例えば、日本財団「海と灯台プロジェクト」の一環として、静岡県にある門脇埼灯台でも、ボイスフレンド実装に向けて実証実験を行う予定(今年12月想定)だという。
オトバンクは日販と23年に資本業務提携していることもあって、今回の制作協力を進めた。久保田社長は「入場料がある書店という『文喫』のカラー、ブランドイメージに沿ったキャスティングにした。また、来店者により没入してもらい、書籍やグッズの購買にもつなげられるようなストーリーづくりも意識した」と話した。
また、書店と音声コンテンツの相性の良さも指摘。「耳だからこそできる付加的な体験が、来店動機にもつながるなど、今後もさまざまな可能性が考えられる。何かできないかと思ったら、ぜひ『スタジオ オトバンク』に要望を伝えてほしい。私たちはそれを形にする」と呼びかけた。
▽ボイスフレンド「New Store Manager」スケジュール=「文喫 六本木」9月6~24日/「文喫 福岡天神」10月4~22日/「文喫 栄」10月30日~11月18日
▽体験時間=1回あたり20~30分程度
▽チケット料金=1980円(税込)※事前予約・日時指定制