文化通信社 第2回「ふるさと新聞アワード」贈呈式開催 地域紙の存在、価値あらためて知る機会に

2022年12月5日

 文化通信社は11月25日、全国の地域紙の優れた記事を表彰する第2回「ふるさと新聞アワード」(協賛:Google ニュースイニシアティブ、株式会社PR TIMES)の贈呈式を東天紅上野本店(東京都台東区)で開催した。グランプリや「もの」「こと」「ひと」の各部門賞を受賞した地域紙の記者らを表彰したほか、Google ニュースイニシアティブ(以下GNI)が選定する「Googleアワード」も授賞した。

 

贈呈式に出席した受賞者、審査員、協賛社らの皆さん

 

 文化通信社は創業75周年を迎えた昨年、地元地域の社会・経済・文化の発展、活字文化を守るため、日々の新聞発行を続けている地域紙(主に市町村を発行エリアとする新聞)を応援する目的で、「ふるさと新聞アワード」を創設した。

 

 第2回のグランプリに輝いたのは、胆江日日新聞(岩手県奥州市)の記事「『コラボが熱い!!』 異業種で商品化」。地元の企業や飲食店、農家、市民団体などがタッグを組み、新商品を生み出すコラボ企画が増えており、それぞれの得意分野や長年の取り組みを融合させることで新たな価値が生まれ、消費者が地域の魅力に気付くきっかけにもなっている。そんなコラボ企画を連載で紹介。「地元で生まれる新たなチャレンジをコラボという切り口で全体をとらえ、編集している視点」などが高く評価された。

 

 また、今回は地域にゆかりのある審査員が選ぶ従来の授賞記事に加え、Googleがデジタル時代のジャーナリストと報道機関を支援する取り組みであるGNIが選定する「Googleアワード」を設けた。GNIが提供するトレーニングでの学びを活かし、デジタルの力を使って特徴的かつユニークに作られた記事を対象とした。

 

 同賞を受賞したのはグランプリと同じく胆江日日新聞で、記事は「閉店ペット店から動物300匹余り保護、SNSで一時誤情報も」。SNSやネット上の情報を収集するとともに、SNS投稿者への直接取材などを総合的に行い記事化。取材の過程で、一般のSNS利用者の誤情報拡散が行われていることも判明し、その検証も行った。「検索コマンドを活用して記事を作成したことに加え、誤情報の拡散を防いだ点」などが高く評価された。

 

 

「業界に役立つことを具体的に」

 

 

 贈呈式の冒頭、文化通信社の山口健代表取締役があいさつ。「出版、新聞業界向けの専門紙を発行するだけでなく、業界に役立てることを具体的に一つ一つやっていく」との思いから、ギフトブックカタログ『ほんのきもちです』や絵本のカタログ『こどものための100冊』、書店向けのデジタルサービス「BOOKLINK」など、各事業を推進していることを紹介。ふるさと新聞アワードも同じような考え方で、「地域の社会や文化を守る地域紙の存在、魅力ある記事の数々をより多くの人に知ってもらいたいという思いから創設した」と話した。

 

山口代表

 

 

 「もの」「こと」「ひと」部門の最優秀賞、優秀賞の地域紙をそれぞれ表彰。グランプリを受賞した胆江日日新聞の松川歩基記者には文化通信社の星野渉社長から、Googleアワードを受賞した胆江日日新聞の児玉直人報道部次長兼ICT化推進室長にはGoogleニュースパートナーシップ本部北アジア統括の友田雄介氏から、それぞれ賞状と記念の盾が贈られた。

 

胆江日日新聞の松川歩基記者(右)と文化通信社の星野渉社長

胆江日日新聞の児玉直人報道部次長兼ICT化推進室長(右)とGoogleニュースパートナーシップ本部北アジア統括の友田雄介氏

 

 今回の審査員は、加来耕三氏(歴史家・作家)、小山薫堂氏(放送作家・脚本家)、高橋俊宏氏(ディスカバー・ジャパン代表取締役)、中川政七氏(中川政七商店会長)、山崎まゆみ氏(温泉エッセイスト)が務めた。贈呈式で各審査員が、地域に根ざした新聞があることの大切さを語るとともに、地元地域のニュースを日々取材し報じる記者らにエールを送った(各氏のコメントは下記に掲載)

 

 

「地域紙の存在を改めて示せた」

 

 

 グランプリを受賞した胆江日日新聞社の小野寺弘行社長もあいさつ。大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手の出身地としても有名な岩手県奥州市を拠点に、創刊76周年を迎えたことなどを話したうえで、「地域に根ざす新聞社の存在を、地域の読者に改めて示すこともできた。全国紙、県紙、SNSなどネット上には載らないような記事を取材し、発信していくことが地域紙の使命であり、生命線だ。受賞を機に地元に必要とされる情報媒体として、これからも社員一同がんばっていきたい」と喜んだ。

 

小野寺社長

 

 

 Googleの友田氏もあいさつし、GNIの取り組みなどを改めて紹介。そのうえで「私たちは来年もこういった形で、報道機関への支援を続けていきたいと計画している。皆さんがどういったことに困っていて、それに対して私たちがどういったお手伝いをできるのか。さまざまな機会を通じて、ともに考えていきたい」と語った。

 

 

「地域紙の応援続けていきたい」

 

 

 懇親会に移り、協賛社のPR TIMESパートナービジネス開発室室長の髙田育昌氏が登壇。「今年、デジタルメディア向けのサブスクリプション管理プラットフォームなどを運営する株式会社キメラと資本業務提携した。当社としても、現在進めているブロック紙・県紙との地域連携とはまた別に、今回のふるさと新聞アワードへの協賛を手始めとして、地域紙の皆様への応援を続けていきたいと考えている」と呼びかけた。

 

高田氏

 

 乾杯のあいさつは日本地域紙協議会の新保力会長(市民タイムス)が務め、「コロナ禍で地域が見直されている中、地域に根ざした新聞がある町にも大きな価値があると思っている。地域紙の経営者、記者ら社員はみんな前を向きながら頑張っている。ぜひこれからも皆さんに応援していただきたい」と語った。

 

新保会長

 

 

 贈呈式での審査員、協賛社らのコメントは以下の通り。

 

〈審査員メッセージ〉(五十音順)

 

歴史家・作家 加来耕三氏
 地域紙の皆さんは日々、地元の出来事を取材して記事を書いています。それがどれだけ価値があるかは、現場にいる人間にはなかなか分からない。それを評価する人がいることが大事です。全国の地域紙の記者をたたえるこの賞はとても貴重なものです。

 

放送作家・脚本家 小山薫堂氏
 今年も、素晴らしい記事を読み、心が温かくなるような時間を過ごすことができました。地域紙が報じるニュースによって、地域の人たちが引き寄せられ、それが力となり、新たな価値を見出すことでしょう。これからもそういった記事をたくさん作り、地域に光りを灯し、明るくするような存在であり続けてほしいです。

 

ディスカバー・ジャパン代表取締役 高橋俊宏氏
 地域紙の作り手の方々の熱い思いに触れることができて感動しました。地域に対する温かい眼差し、地域の方々の思いをすくいとる地域紙の方々の存在は、地域にとってなくてはならないことを再発見させていただきました。ある連載ネタは大河ドラマを一本みたかのような読後感を抱くなど、ネタの切り口やクオリティに脱帽した記事がたくさんありました。今後も地域を元気にするメディアとしてそれぞれ地域紙の皆様方の活躍を楽しみにしています。

 

株式会社中川政七商店 代表取締役会長 十三代 中川政七氏
 メディアとして事実を伝えることが大切であると同時に、地域紙には、地域の人たちの背中を押してあげるような記事があります。今回も世の中を変えていく、少しでも良くしていくという姿勢がにじみ出ている記事が多くありました。読んで勇気づけられたり、新しい気づきがあったり、誰かの次の行動につながっていると思います。

 

温泉エッセイスト 山崎まゆみ氏
 今回の審査でも、改めて地域紙の力を感じることができました。私も雑誌や新聞に連載を持つ物書きですが、今回の審査をすることで多くのことを学ばせていただきました。皆さんは素晴らしい仕事をされており、それを評価する人がいることで、皆さんの仕事がより輝くことでしょう。

 

〈協賛社あいさつ〉

 

Google ニュースパートナーシップ本部 北アジア統括 友田雄介氏
 今回、第2回「ふるさと新聞アワード」に協賛し、地域紙の記者らを対象にGNI が提供するトレーニングを実施するとともに、その学びを活かし、デジタルの力を使って特徴的かつユニークに作られた記事を表彰する「Googleアワード」を設けました。
 私たちはこれまでも報道機関への支援を続けており、来年も継続したいと計画しています。地域紙の皆さんがどういったことに困っていて、それに対して私たちがどのようなお手伝いができるのか。さまざまな機会を通じて、ともに考えていきたいです。

 

株式会社PR TIMES パートナービジネス開発室室長 髙田育昌氏
 当社は、報道機関向けの発表資料(プレスリリース)をメディア記者向けに配信するとともに、「PR TIMES」およびパートナーメディアに掲載し、生活者にも閲覧・シェアされています。プレスリリースは企業、事業者、それを構成する個人が「行動」して初めて発信されるものです。そして、その行動がより多くの人たちに知られることで、次の行動につながっていく。そういった良い循環を目指して事業を推進しています。今回受賞された記事はいずれも、読んだ人たちの共感を呼び、「自分もがんばろう」「私もやってみよう」と背中を押したり、励ますような記事ばかりでした。

 当社は今年、デジタルメディア向けのサブスクリプション管理プラットフォームなどを運営する株式会社キメラと資本業務提携しました。当社としても、現在進めているブロック紙・県紙との地域連携とはまた別に、今回のふるさと新聞アワードへの協賛を手始めとして、地域紙の皆様への応援を続けていきたいと考えています。