山梨県富士吉田市で新聞大会 「ジャーナリズム担う人材確保・育成」「デジタル事業の展望」を議論

2022年10月18日

 

新聞社・通信社の関係者らが一堂に会した新聞大会

 

 日本新聞協会は10月18日、第75回新聞大会を山梨県富士吉田市内のホテルで開催し、全国の新聞・通信社の経営幹部ら約350人が出席した。午前中の大会式典で新聞協会賞などの受賞者を表彰。午後は記念講演に続いて、2部制のパネルディスカションが行われた。(パネルディスカションなどの模様は本紙10月25日付で詳報します)

 

野口会長兼社長

 

 大会式典の冒頭、山梨日日新聞社・野口英一取締役会長兼社長が「当紙は今年7月1日、創刊150周年を迎えた。新聞大会を山梨県で開催するのは初めてとなるが、富士山のふもとであるここ富士吉田市で、ぜひ業界の将来のことを広い気持ちで語り合う機会にしていただきたい」と歓迎のあいさつ。

 

 「さまざまな不安要素がある時代だからこそ、新聞が伝えるべきこと、解説するべきことは多い。ここに集まった皆さんとともに、これからの新聞の姿がどうあるべきかを考える有意義な一日になることを祈念している」と語った。

 

 続いて、新聞協会・丸山昌宏会長(毎日新聞社)もあいさつし、「コロナ禍での新聞大会も3年目となる。長期化するロシアのウクライナ侵攻や急激な円安の進行もあり、人々の暮らしが脅かされている。新聞界も発行部数、折込広告の減少、新聞販売所の労務難など厳しい状況が続いている」と改めて説明。

 

 さらに、「GAFAなどの巨大プラットフォームは、人々に幅広く利用されている。その反面、ビッグデータの集中やアルゴリズムの不透明さなどの問題が起きるとともに、人々が受け取る情報に偏りが生じるといった言論空間の歪みが深刻化している。市場の寡占化が進み、競争の公正性が揺らいでいる」と指摘。

 

 「EUやオーストラリアなどをはじめ諸外国では、こうした弊害に対する制度整備が進められている。日本でも関係省庁が政策課題に取り上げ、デジタル広告に関しては法改正により、プラットフォーム事業者の自主的な取り組みを促す共同規制によって課題解決を図ることになった」としたうえで、「健全なジャーナリズムを持続していくうえで、ニュースコンテンツの対価やデジタル広告市場の適正な在り方をどのように考えるかは、重要な課題。巨大プラットフォームに関する問題に、新聞協会として迅速かつ強力に取り組むため、体制の構築に向けて、検討を進めている」と明かした。

 

新聞協会賞、新聞技術賞、新聞経営賞を表彰

 

 大会決議(別項)の採択に続き、新聞協会賞に選ばれた朝日新聞社、読売新聞東京本社、毎日新聞社、中国新聞社、北海道新聞社、静岡新聞社の各受賞者に授賞。新聞技術賞に選ばれた読売東京本社、新聞経営賞の愛媛新聞社も表彰された。

 

 記念講演は、山梨県富士山科学研究所の藤井敏嗣所長が「富士山噴火~最新の知見から」をテーマに話し、新聞などマスメディアの報道のあり方に求めることや、期待することなどを語った。

 

パネルディスカション第1部

 

 研究座談会のパネルディスカション第1部は「多様な人材確保・育成のための環境整備」をテーマに開かれた。丸山会長がコーディネーターを務め、新聞協会・中村史郎副会長(朝日新聞社)、秋田魁新報社・井上さおり取締役、神戸新聞社・西海恵都子取締役の3氏がパネリストを務めた。ジャーナリズムを担う人材をどう確保し、育てるかというテーマについて、女性役員もパネリストに交えて議論した。

 

パネルディスカション第2部

 

 続く第2部は「デジタル~今後の事業展開の展望」がテーマ。引き続き丸山会長がコーディネーターを務め、日本経済新聞社・長谷部剛社長、山梨日日新聞社・野口会長兼社長、中日新聞社・大島宇一郎社長の3氏がパネリストで登壇。デジタル化が新聞社にもたらしたもの、若年層世代へのアプローチ、電子新聞以外のデジタルビジネスについて、各社の現状や今後の展望などが語られた。

 

 来年の新聞大会は長野県軽井沢市で開かれる。最後に、地元の県紙である信濃毎日新聞社・小坂壮太郎社長があいさつし、次回大会への参加を呼びかけた。

 

第75回新聞大会決議

 

 戦後の国際秩序を武力によって大きく揺るがす事態や、選挙期間中に元首相が銃撃されるという暴挙が発生した。平和と民主主義を破壊する行為を、私たちは決して容認できない。

 

 感染症の流行による社会・経済活動への打撃は、物価の上昇と相まって、国民生活に多大な影響を及ぼしている。相次ぐ自然災害に備え、地域の防災、減災の力を高めることも急務である。

 

 報道機関は、正確で信頼される報道と責任ある公正な論評で、課題解決に向けた多様で建設的な議論に寄与しなければならない。私たちは平和と民主主義を守り、その担い手である人々が安心して暮らせる未来を築くため、ジャーナリズムの責務を果たすことを誓う。