『オレンジページ』 読者把握し反転目指す 読者調査で「ファンのツボ」言語化

2022年10月13日

オレンジページ10月17日号

 

 株式会社オレンジページは今年、『オレンジページ』編集長に元『レタスクラブ』編集長で株式会社ファンベースカンパニーの松田紀子氏を起用。8月17日発売号から新編集長体制での発行に移行した。松田氏はファンベースのノウハウを生かして同誌のコアファンの志向を言語化し、編集部で共有するなどの取り組みを開始。松田氏に話を聞いた。

 

松田編集長

 

 『オレンジページ』は今年6月で創刊37年を迎えた生活情報誌の草分け。『レタスクラブ』編集長時代の松田氏にとっても、「(部数を)抜けそうで抜けない目標」だった。

 

 その『オレンジページ』も雑誌市場が低迷するなか、20万部(ABC発行社レポート2019年上半期)を超えていた販売部数が約11万部(同21年上半期)まで減少。松田氏が編集長に就任した時期、「部数が下がり続けるなかで、編集部は自信を無くていました」という。

 

コア読者の話を徹底分析

 

 そこで、松田氏はファンベースカンパニーで培ったノウハウで読者調査を実施。同誌のアンケートに答えるなどして登録された約19万人の「オレンジページメンバーズ」から抽出したコア読者10人に、1人1時間のインタビューを行った。その結果、「本誌に対するゆるぎない信頼感がベースにある」ことが判明。

 

 さらに、インタビューの発言内容を詳細に分析し、同誌の「読者タイプ」を導き出し、そうした読者が同誌に期待する価値を類型別に言語化、「ファンのツボ」を定義。編集部で共有して指針とした。すでに編集部員が感じていたことでも言語化することで、「誌面、イベント、メッセージなど、すべてここを外してはいけないと確認できた」という。

 

 そして「月に2回、読者に笑顔を届ける素晴らしいことをやっている。こんなに信頼を築いている類誌はない」と部員を励ました。「導き出したファンタイプと編集者自身が似ていることもわかりました。自分が喜ぶものを作ればいいので、企画編集会議も盛りあがっています。もともとメンバーの編集能力は高いので、良い方向に向かっています」と編集部の雰囲気は変わった。

 

 調査のポイントは、「いかに濃いファンにタッチするか」だという。1回目の調査は松田氏自身が同誌を知るために実施したが、7月からは月1回のペースでファン読者とオンラインミーティングを開催。毎回8人ほどを招き、編集部員が読者のニーズや悩み、言語化できていない感情を聞く。「今後は読者を集めて定期的にファンミーテイングも開き、読者同士が横でつながるコミュニティーを作っていきたい」と考えている。

 

Web編集長置き強化

 

 また、他誌に比べてWebが脆弱だと感じた。そこで、「紙とWebでは読者が違う。同じ情報を紙にもWebにも満遍なく出して、タッチポイントを増やし、本誌に入ってもらう。閲覧者の1割が買ってくれれば大きい」という方向性で、Web編集長を置いて強化に取り組んでいる。あわせて、「オレンジページメンバーズ」のプラットフォームを立ち上げる予定だ。

 

ファンベースカンパニーとの連動活かす

 

 松田氏はいまもファンベースカンパニーに籍を置く。雑誌編集現場から転じて同社創業に参加。「もともと本能的にやっていたことが、ファンベースカンパニーに所属することで理論化され、再現性がある考え方として使うことができるようになりました」という。また、両方の立場を兼ねることで「ファンやブランドについて日々考えているプロのメンバーたちにすぐに相談できるメリットがあります」とも。

 

 ファンベースカンパニーでは、依頼を受けると、クライアントが持つメーリングリストなどお客との接触手段を使い、ファンの発言録などからファンをタイプ別に分析。「ファンのツボ」を見つけて、施策の方向性を示し、施策の実行に伴走する。

 

 松田氏は、雑誌について「ファンが見えやすい」とみている。また、紙の雑誌という「物」が存在することも心強いと感じている。「ネットは、瞬間的にパズリますが、すぐに忘れられます。雑誌というモノが存在していることにゆるぎない価値があります」。そして、『オレンジページ』は「ある意味日本人の味覚をはぐくんできた雑誌。失うことは文化の喪失」だと考えている。