光文社 『四角六面』出版記念イベント ルービックキューブ生みの親・ルービック教授の自伝

2022年5月30日

 光文社は5月17日、世界的な人気を誇る玩具・ルービックキューブの生みの親であるエルノー・ルービック教授の自伝『四角六面』の出版を記念して、ジャーナリストでテレビでのニュース解説などでおなじみの池上彰氏を迎えたトークイベントを、東京・港区の駐日ハンガリー大使館で開いた。

 

左から『四角六面』翻訳者の久保陽子さん、トークゲストの池上彰さん、パラノビチ・ノルバート特命全権大使

 

 イベントでは、翻訳を担当した久保陽子氏、ルービックキューブの日本における総代理店であるメガハウスの広報担当・板垣有記氏、今年G-SHOCKのルービックキューブ・コラボレーションモデルを発売したカシオ計算機・岩元一志氏とともに、ルービック教授とルービックキューブについて語り合った。

 

 まず、パラノビチ・ノルバート駐日ハンガリー特命全権大使が、ルービックキューブ、そしてハンガリーと日本との関わりについて述べ、「ルービックキューブはハンガリーで生まれた、小さいけれどスマートな創造性を表したオブジェクトだ」と紹介。

 

 書籍『四角六面』については、「ルービックキューブの創造の秘密が語られ、読者を幾何学・心理学・芸術・デザイン・建築の旅に誘う本」だと語った。今や世界で10憶人以上の人が遊び、世界的な競技大会が開催されたり、大学の教材にもなっていたりするルービックキューブが、「日本とハンガリー両国間の創造性と、スマートな協力のシンボルとなること」を願った。

 

 ルービック教授の来日は叶わなかったが、教授のメッセージによれば、「キューブは、挑戦する度に新しい発見があり、新たな挑戦が現れてくるもの」であり、「それはさながら人生にいくつもの面・色・要素があるようなもの」だという。

 

 そうしたさまざまな要素を持つルービックキューブのように、自伝の構成も非常に変わっていると話したのは、翻訳にあたった久保氏。普通であれば、最初から順に読むことを想定して翻訳するが、本作の場合は「読みたいところだけピックアップしてバラバラに読めばいい」と著者自身が語っていたという。ルービックキューブに関する建築学、数学、教育といった様々な観点で著者の考えが綴られ、しかもそれが著者自身とルービックキューブが擬人化された「キューブ君」というふたりの語り手のもと、バラバラに構成されている。そのため、翻訳には非常に悩んだと明かした。

 

 こうした著者の考えについて、池上氏は「かつて社会主義国であったハンガリーでひとつの考えを押しつけられていたからこそ、その反動として自由な発想が生まれたのではないか」と分析した。

 

 実際、著者は現在教育に力を注いでおり、アメリカで十数年前から提唱されている「STEM教育(S=Science、T=Technology、E=Engineering、M=Mathematics)」に、A(Art)を加えて「STEAM教育」とし、理系・文系の双方を領域横断的に学ぶ教育法を推進しているという。そして、理系・文系どちらの要素も持っているルービックキューブは、そのシンボルとなり得るものだと述べた。

 

 さらに、板垣氏からはルービックキューブが競技大会等を通じて国も年齢も超えたコミュニケーション・ツールとして愛されていること、コロナ禍でステイホームを余儀なくされた際にルービックキューブが再注目され、日本における「第3のブーム」と言える反響を呼んでいることなどが語られた。

 

 岩元氏も、G-SHOCKとのコラボレーションが多くの人に支持され、2月に発売されたモデルが1週間で完売したことなどを伝えた。

 

 最後に、池上氏は本書の記述を引用しつつ、ルービックキューブの秘密が「3」という数字にあることを明かした。素数であり、「完全」を象徴し、キリスト教においては「三位一体」として神性の象徴でもある3。高さ・広さ・深さの3つからなる次元に我々は生きていること、時間は過去・現在・未来の3つに分けられることなど、3はまさに「マジックワード」なのだと語って、トークを締めくくった。