2022年本屋大賞 大賞は逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』 発表会3年ぶりに開催

2022年4月7日

大賞を受賞した逢坂氏(前列右から4人目)を参加した書店員が囲んでのフォトセッション

 

 NPO法人本屋大賞実行委員会は4月6日、東京・港区の明治記念館で19回目となる「2022年本屋大賞」の発表会を開き、大賞受賞作として逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)を発表した。会場には報道関係者と受賞出版社などが参加し、オンラインでライブ配信も行われた。会場に人を集めての開催は19年以来3年ぶりとなった。

 

 実行委員会の浜本茂理事長(本の雑誌社)は、同賞の1次投票に書店483店627人、2次投票に322店392人といずれも前回を上回る数だったことに触れ、「投票しようというモチベーションと、賞への期待がますます高まっていると喜びを感じるとともに、重く受け止めている」と述べ、次回20回は「節目にいろいろとやりたい」と意欲を示した。

 

浜本理事長

 

 「翻訳小説部門」の発表では、1位を受賞したソン・ウォンピョン『三十の反撃』の翻訳者・矢島暁子氏が登壇し、著者のメッセージと自らの思いを語った。「発掘部門 超発掘本!」では吉村昭『破船』を推薦した未来屋書店宇品店の河野寛子氏が、感染症関連本を探す中で同書と出会ったエピソードなどを話し、吉村氏を担当する新潮社文庫編集部の高梨通夫氏が「生前の吉村氏は作家が亡くなると作品が読まれなくなると話していたが、読み継がれ、40年たった今、超発掘本に選ばれてより多くの人に届くきっかけができた」と喜びを語った。

 

『三十の反撃』の翻訳者・矢島氏

超発掘本を推薦した河野氏(右)と新潮社の高梨氏

 

 大賞は藤沢本町トレアージュ白旗店の小出美都子氏がプレゼンターとなり逢坂氏にトロフィーを、続いてオフィシャルスポンサーの日本能率協会マネジメントセンター代表取締役社長・張士洛氏が記念品を手渡した。また、副賞として図書カード10万円が贈られた。

 

逢坂氏(左)とプレゼンターの小出氏

副賞として各種NOLTY手帳を贈呈した張社長(右)と逢坂氏

 

 あいさつに立った逢坂氏は「ゲラ読みから店頭展開まで多くの書店員に愛されていると実感した」と語ったうえで、「ロシアがウクライナに侵攻した2月24日以来、深い悲しみのうちにあり、作品の主人公が今の状況を見たらどう思うのか悲嘆にくれた」などと語り、戦争やメディアの姿勢などへの思いを語った。

 

 そして、副賞の10万円を、ロシアで反戦運動に立ち上がった人々を支援する団体に寄付することを表明。最後に「主人公は悲しみはしても絶望はしない。自分が必要とされていると思ったことをするだろう」と述べた。

 

 最後に、3年前に実行委員となって初めての発表会になった宮脇書店和歌山店の岩瀬竜太氏が中締めのあいさつを行い、フォトセッション、受賞者記者会見に移った。

 

 『同志少女よ、 敵を撃て』は21年8月に同作で第11回アガサ・クリスティー賞大賞を受賞した逢坂氏デビュー作。11月17日に初版3万部で発売され、第166回直木賞候補作、「キノベス!2022」第1位となり、3月4日時点で11万部を突破している。

 

 逢坂冬馬(あいさか・とうま)氏は1985年10月8日埼玉県所沢市生まれ。明治学院大学国際学部国際学科卒。埼玉県さいたま市在住。

 

 今回は同作のほか青山美智子『赤と青とエスキース』(PHP研究所)、知念実希人『硝子の塔の殺人』(実業之日本社)、米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA)、小田雅久仁『残月記』(双葉社)、一穂ミチ『スモールワールズ』(講談社)、朝井リョウ『正欲』(新潮社)、町田そのこ『星を掬う』(中央公論新社)、西加奈子『夜が明ける』(新潮社)、浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』(KADOKAWA)の9作品がエントリー。

 

 21年12月1日から翌1月3日まで第1次投票を受けてエントリー作品を選出、1月20日から2月28日まで第2次投票を受け付けた。