トーハンとメディアドゥ リアル書店で電子書籍販売の実証実験、八重洲BC本店など3店舗で開始

2022年4月1日

店頭配布リーフレット、ポスター

 

 大手取次トーハンと電子取次最大手メディアドゥは4月1日、書店店頭で電子書籍販売の実証実験を開始した。実験は東京都内の「八重洲ブックセンター本店」「ブックファースト新宿店」「ブックファースト中野店」でスタートし、順次トーハングループ書店の他店舗へ拡大する。期間は4月1日から9月30日までの6カ月間。

 

リアル書店で電子書籍販売、手数料が収益に

【資料】実証実験スキーム図のサムネイル

 

 リアル書店の来店客がスマートフォンを利用し、書籍やコミックスのバーコードをスキャンすると、メディアドゥの運営する電子書店「スマートBookストア」で電子版の試読・購入ができる。

 

 実証実験スタート時に販売対象となっている電子書籍は約30万点。書店は電子書籍の販売数に応じた手数料を得る仕組み。合わせてサービスに関するアンケート調査も行う。

 

 各店舗には電子化済みの商品を集めた「電子書籍フェア」コーナーを設置する。また、出版社の協力を得て、スタート時は講談社、ダイヤモンド社、サンマーク出版の3社でフェアを展開。他の出版社とも協議を進め、実験期間中に順次フェアの入れ替えを行う。電子化率の高い文庫、コミック、ベストセラーコーナーのPOPなどで誘客を図っていく方針だ。

 

 実施期間中にクーポンのプレゼントキャンペーンを実施する。店頭の特設コーナーで「スマートBookストア」の新規会員に登録すると、1000円分の電子書籍クーポンを進呈。 店頭で電子書籍の購入後、アンケートに協力するとさらに1000円分の電子書籍クーポンをプレゼントする。

 

 各店ともそれぞれのキャンペーンは先着200人まで。ブックファースト2店舗は4月1日からキャンペーンを開始。「八重洲ブックセンター」はキャンペーン時期未定。詳細は同店ホームページで発表する。

 

「地域の知の拠点」をアップデート、持続可能な書店モデル構築

 

 2021年3月に資本業務提携したメディアドゥとトーハンは、NFTデジタル特典付き出版物の開発、電子図書館OverDrive事業など、リアルとデジタルを組み合わせた新施策を実施してきた。

 

 両社は「書店での電子書籍販売」について、「市場の拡大が続く電子書籍に関して、リアル書店からもビジネスに参画したいとの声が高まっている。また、読者からも知的好奇心を刺激され未知の本と出会える書店空間の中で、電子書籍も簡単に購入できるサービスがあれば、その利便性から一定の利用ニーズが見込まれる」と経緯を説明。

 

 そのうえで「電子書籍販売という形で、デジタル市場の成⾧力をリアル書店にも取り込み、書店が元来有する『地域の知の拠点』としての機能をアップデートすることが、読者の支持拡大につながり、将来にわたり持続可能な書店モデル構築の糸口になり得ると考えている」と取り組みの狙いを強調した。

 

 取り組みをバックアップするため、メディアドゥとトーハンは出版社に紙書籍の積極的な電子化を呼びかけている。トーハングループのデジタルパブリッシングサービスでは電子化を請け負う体制を整えており、流通する電子書籍のラインナップ拡充を促進する。