大田丸 データ公開サービス拡大目指す 出版社との関係深め加盟メリット強化

2022年1月27日

 地域書店の協業会社である株式会社大田丸(大垣守弘社長・大垣書店)は、加盟書店の販売データを出版社に提供する「大田丸データ公開サービス(ODS)」の利用拡大を進めている。出版社との関係を強化し直接取引などの取り組みを進め、加盟書店に提供するメリットを拡大する。

 

 ODSはシステム会社の文献社が開発し、2020年5月にサービスを開始。利用料金は他出版社のデータも閲覧できる「全商品公開アカウント」が月額2万5000円(追加アカウント5000円)、自社商品のみ閲覧できる「自社商品限定アカウント」が同1万円(同2000円)。

 

大田丸が作成したODSの概要図

 

 利用出版社は大田丸に加盟する11書店の販売データを個店・一括で随時確認できるほか、共同販売の売上実績や在庫状況を把握できる機能や、定番や売れ筋商品などを登録して各店舗の売れ行き、在庫状況を確認できる機能なども提供。

 

 JANコードにも対応し、データはCSV形式でダウンロードできる。また、近刊の内容については日本出版インフラセンターの「JPO出版情報登録センター(JPRO)」の近刊情報とリンクしている。

 

 出版社はODSを重版判断に活用したり、地方新聞への広告出稿効果の検証、各店舗の欠本確認と補充手配、他社商品との比較などに活用しているといい、自動発注と連動させている出版社もある。

 

 「コロナで出版社からの問い合わせは増えている」と大田丸営業本部・赤井良隆本部長は述べる。「在庫確認して発注提案をするなど、本部とコミュニケーションをとりたいというご要望が多い」という。

 

 同社としてもODSの利用出版社を増やすことで、出版社との関係を深めるという狙いがある。赤井本部長は「加盟店は地域書店が多いので、商品供給に時間がかかったり、確保できないこともある。ODSを活用して直接取引や新たな物流など、これまでにない取り組みも進めたい」と話す。

 

 大田丸は11年に大垣書店、今井書店、廣文館の3社で設立。現在加盟書店は11社140店舗に拡大。出版社と報奨契約を結ぶなどして企画商品を販売する共同販売事業を中心に、コミックス・ライトノベルの販促企画「こみらの!」や、電子書籍端末を加盟書店に卸す楽天Kobo事業などを行っている。

 

 毎月1回定例会を開催し、販売施策の実績確認や、新たな販売企画の提案、情報交換などを続けている。企画商品は書店6社で構成する商品選定委員会で出版社からの提案を検討している。

 

 赤井本部長は書店が大田丸に加盟するメリットについて、共同販売といった事業以外にも「地域書店が通常接点を持ちにくい他書店のオーナーや現場の方々とフランクに話し合い、いろいろ相談もできる。刺激になり、切磋琢磨できている」と話す。

 

 今後の展開については、「いまは報奨企画への取り組みがメインだが、ノベルティやプライベートブランドの作成などにも取り組み、大田丸ならではの加盟メリットを示したい」と述べ、新たな書店の加盟も進めていく考えを示している。

 

大田丸加盟書店=今井書店(鳥取)、オーエンターテイメント(大阪)、大垣書店(京都)、啓林堂書店(奈良)、廣文館(広島)、東山堂(岩手)、久美堂(東京)、ブックスタマ(東京)、文苑堂書店(富山)、豊川堂(愛知)、郎月堂(山梨)。

 

□問い合わせは大田丸営業本部、電話075(468)1411、メールy-akai@ohtamaru.co.jp(赤井良隆)/東京事務所、電話090(9233)4361、メールkazusa@ohtamaru.co.jp(上総暁)

 

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