苦楽堂 神戸の書店員が書いたブックガイド『今日は何の日? 今日も本の日!』発刊

2021年11月26日

本をまとめた逢坂さん

 

 神戸市垂水区の書店員が、ほぼ毎日店頭の黒板で発信していた本の情報をまとめたブックガイド『今日は何の日? 今日も本の日!─まちの本屋が店先の黒板にほぼ毎日書いたブックガイド(逢坂肇と流泉書房の仲間たち)』が11月30日、苦楽堂(神戸市・石井伸介社長)から発刊される。日々来店客と向き合っている書店員が、お客目線でまとめたブックガイドとして注目される。

 

□四六判変形/264㌻/定価1760円

 

 舞台となった流泉書房(大橋崇博社長)は1953年に神戸市中央区三宮で創業、80年に須磨区に支店を開設したが、阪神淡路大震災で三宮店が被災したため支店に統合。18年に現在地に25坪で移転した。

 

 情報発信のきっかけは、「来店される人が毎日目に留まるものはないか」という社長の発案。調べると毎日何かの記念日がある。最初は記念日を基本にニュースや関心を引きそうなものを選び、それに関わる書籍を紹介し始めた。

 

 逢坂さんを中心に、大橋社長やスタッフの黒木達也さんが手書きし、画像をSNSに投稿。1年目は記念日を中心に史実を交え、2年目は著名人の誕生日や忌日を加えてきたが、3年目にはネタが一巡して選別が難しくなったという。

 

 そうした中、ウィキペディアの「フィクションのできごと」が目に留まり、逢坂さんは漫画や小説の登場人物の誕生日や、作中の出来事を活用するようになった。

 

 本書をまとめた逢坂さんは、書籍化にあたって販売会社や出版社の発注システムで1冊1冊在庫を確認。「お客様の手に届けられるもの、来店した人が楽しめるもの、そして売り上げにつなげるものを選んだ」という。面白いネタなのに手に入らない場合、そのオマージュやパロディーといった入手可能な関連作品に誘導するコメントを付け加えた。文庫を中心にコミック、実用書とジャンルは問わず、リーズナブルな価格帯を意識したという。

 

 各月の前後には、書店の風物詩や、書店員が日頃何をしているかを綴ったコラムを掲載している。

 

 逢坂さんは、「何を読めばいいのかわからない、というお客様が黒板を見て『この本面白そう』と思ってもらえるように始めた企画。書店員が読んでも参考になるのではないか。それぞれが新たな本を見つけるきっかけになってくれたらうれしい」と話し、「紹介している本の内容は幅広くさまざま。文庫本や文芸書コーナーなど多面での展開を勧めたい」としている。

 

 大橋社長は、「紹介している内容は世代も幅広く、お父さんが昔読んだ本を子供に勧めるなど家族間での対話のきっかけにもなる。新たな本との出会いにつながってほしい」と発刊を喜んだ。

 

【櫻井俊宏】