「Web商談会2021秋」開催報告 今後は“リアル商談の代替”からコミュニケーションツールへ

2021年11月26日

第4回目を迎えた「書店向けWeb商談会」

 

 有志の出版社29社からなる書店向けWeb商談会実行委員会は10月4~22日の3週間、「書店向けWeb商談会2021秋」を開き、このほど開催結果の報告書が公開された。「書店大商談会」実行委員会と初の共同開催となった今回は、各出展社の注文書をまとめた紙のパンフレットを作成。全国7000店舗の書店へ配布し、パンフレット掲載のQRコードでWeb商談への誘導を行った。このほか、史上初となる「全国書店フェアアイデアコンテスト」 も実施した。

 

三芳実行委員長「出版の歴史に絶対に必要だった」

書店大商談会パンフレット、QRコードでWeb商談会に誘導

 

 三芳寛要実行委員長(パイインターナショナル)は、「コロナ禍をきっかけに有志の出版社で始めた本商談会は、今回4回目にして書店大商談会との共同開催となった。出版社だけでなく書店や販売会社と手を取り合って業界全体でコロナ禍に立ち向かい、流通のオンライン化に取り組めたことは、何よりも意義があり、出版の歴史に絶対に必要だった」とコメントした。

 

出展社・参加人数・取引金額、減少に転じる

 

 今回のWeb商談会には、出版社・玩具メーカーなど131社(前回比27社減)が出展し、書店員など209人(同47人減)が参加。そのうち99人は初めての参加者だった。出展社と参加者が1対1で行う商談は683回(同39回減)、会期中の取引金額は2065万72円(同571万4318円減)と前回に比べ22%減だった。

 

 Web商談会の参加者数や商談金額は回を重ねるごとに増加していたが、今回初めて減少に転じた。要因について、緊急事態宣言解除直後の多忙な時期での開催となったことが挙げられた。また、1年半続いたコロナ禍により業界内でオンライン商談が定着し、書店から「わざわざ商談会に参加しなくても、日常的にオンライン商談をしている」という声もあった。

 

 三芳実行委員長は「Web商談会の目的は、オンラインの力を借りて地域による情報格差を無くすことであり、コロナ禍が過ぎ去ってもオンラインの利便性を根付かせたい」と述べ、望ましい状況に近付いていると総括した。

 

「商談が業務時間内に行われたか」についての回答

 

 開催後にアンケートを実施し、出展社124社と参加者73人から回答を得た。それによると、「業務時間内に商談した」と答えた書店員の割合が75%となった。第1回(20年6月)が62%、第2回(同10月)が63%、第3回(21年4月)が70%と増加している。

 

 Web商談会がスタートした当初は、業務時間外での参加者が4割を占め、「 オンライン商談を業務として認められない」との意見もあった。しかし、現在はオンライン商談が正式な業務として認められる流れにある。

 

 Web商談会以外にも、大手出版社によるオンライン上の説明会、「2020年秋学習参考書オンライン相談会」といった特定分野の版元による合同説明会、また11月に文化通信社が主催した「文化通信オンライン企画説明会」など、書店向けのオンライン企画説明会が広がっている。

 

アイデアコンテスト、雑談サロンなどのイベントも開催

コンテストの1位は「明日、返品される予定の本たち」(ふたば書房・洞本昌哉社長)

 

 Web商談会ではフェアのアイデアを募集する「全国書店フェアアイデアコンテスト」、出版社と書店員の交流を目的とした「雑談サロン」など、さまざまなイベントを企画し、活性化に努めている。

 

 このほかにも、大学生が本の仕入から書店運営までを実践体験できるオンラインイベント「『書店の研究』公開ゼミ―私たちがいま、本屋に夢中になる理由―啓林堂書店+奈良女子大学文学部2021書店ゼミ」を実施した。参加した大学生は出版社とのオンライン商談に参加し、選書と仕入れを行った。仕入れの結果は、啓林堂書店奈良店の書店内書店「ホンノムシ書店」で採用される予定だ。

 

Web商談会、コミュニケーションツールとしての需要

 

 Web商談会について次回の開催は未定。書店からは緊急事態宣言の解除に伴い、リアル商談を望む声が高まっている。その一方で、出展社の6割にあたる78社はアンケートで次回も出展したいと回答した。

 

 継続したい理由として、「コロナ禍が終わっても、遠方の書店とコミュニケーションを取れるから」が85%、「Web商談会ならではの新規書店とのつながりが持てたから」が71%となっている。これに対して「今後もコロナ禍が続きそうだから」を挙げた割合は9%(前回42%)と激減した。

 

 すでにコロナ禍は主な課題ではないとの認識が示され、Web商談会の役割についても「リアル商談の代替ツール」ではなく、コミュニケーションツールとして役割が求められている。

 

リアルとオンラインを相互補完、実行組織を1つに

パンフレットの表紙

 

 共同開催の一環である「書店大商談会のパンフレット作成」について、「参加してよかった」とする声が半数近くある一方で、「どちらともいえない」が44%、「参加する必要はなかった」が7%となった。

 

 矢幡秀治委員長(真光書店)と井之上健浩副委員長(久美堂)は今回の結果を受けて、パンフレットへの参加を出展の必須条件としていたが、今後は必要ないとの認識で一致。また、「リアルはリアルの良さがあり、オンラインはオンラインならではの良さを追求すべきである」として、オンラインでの情報発信における「地域格差の無さ」と「スピード感」を生かしていくとした。

 

 Web商談会と書店大商談会の関係について、「リアルとオンラインで実行組織を分けて考えるべきではない。書店・販売会社・出版社の関係者が書店大商談会の一員となり、リアル部門とオンライン部門がそれぞれを相互補完するべく一体となって考えられる体制が望ましい」と方針を示した。