創元社 西洋絵画の闇に迫る『闇の西洋絵画史』、第1期「黒の闇」篇5作品

2021年4月12日

□各巻B6判変型/上製/64㌻/本体1500円

 創元社(矢部敬一社長)はこのほど、好評な「アルケミスト双書」から、西洋絵画の闇の側面をシリーズにまとめた『闇の西洋絵画史』第1期「黒の闇」篇5作品を発刊した。

 

 アルケミスト双書は世界の不思議を1冊1テーマで網羅。2009年から34の翻訳作品を発刊し、美しい図版と明快な解説が好評を得ている。

 

 『闇の西洋絵画史』は、編集者・評論家としても知られる山田五郎氏が、普段人々の目に触れにくい西洋絵画の闇の部分に焦点を当て、日本オリジナル版としてフルカラー図版と短文で解説を加える。教科書などでは扱いにくい闇の側面はこれまで見落とされがちだったが、闇と光の部分の両方を見ることで全体像が見え、西洋絵画の面白さや根源的な意味が捉えられる。

 

 『悪魔』は西洋美術の大きなテーマ。ルシファーやサタンなど神に背いて地上に堕とされた天使による悪への誘惑、悪魔や魔術に対するキリスト教的な世界観を解説する。

 

 『魔性』はサロメやセイレーン、クレオパトラなど聖書や神話で描かれたり実在した、魔性の女の代名詞とされる女性を収録。

 

 『怪物』は、ペストや飢饉ほか社会的な不安心理をも投影してきた偶像を収録。怪物画の第一人者ヒエロニムス・ボスをはじめ、イマジネーションの芸術でもある西洋絵画では非常に数多く描かれてきた怪物が目を引く。

 

 『髑髏』は、時間的な経過として死を意識させ、栄華のむなしさを表現する。クリムトやセザンヌ、アンディ・ウォーホルなど著名な画家たちも、心象を表すモチーフとして、魅力的なアイコンとして描いてきた。

 

 『横死』は、肉体自体を聖なるものとして考えてきた西洋の思想を反映し、屍を直接的に表現しており、日本的な感覚との違いが際立つ。

 

 編集局企画開発部の坂上祐介さんは、「単なる解説書ではなく、切り口や文章は著者の山田さんらしさが随所に見られて興味深く、短い解説で理解が進む内容。美術コーナーで長く売っていただきたい」と推奨する。

 

 「黒の闇」篇と対をなす「白の闇」篇『天使』『美童』『聖獣』『楼閣』『殉教』は今秋発刊を予定している。

【櫻井俊宏】