震災10年を区切りに地域紙「復興釜石新聞」が休刊

2021年3月15日

「復興釜石新聞」を発行し続けてきた川向氏(2015年3月撮影)

 

 東日本大震災の直後に創刊された岩手県釜石市の地域紙「復興釜石新聞」(釜石新聞社)が、3月27日付の発行号をもって休刊することが分かった。従業員の高齢化などが大きな理由。編集長の川向修一氏は「震災後の2011年6月に創刊し、復興関連の情報やまちの話題を被災者に伝えてきた。しかし、これ以上の継続は困難と判断した。地元の読者には申し訳ないが、震災からちょうど10年を区切りに休刊することにした」と話している。 

【増田朋】

 


 

従業員の高齢化も理由

 

 復興釜石新聞は、震災の影響で休刊した地元の地域紙「岩手東海新聞」の元記者らが11年6月11日に創刊した。11年度から13年度までは国の緊急雇用創出事業を活用して、水・土曜日の週2回、釜石市の仮設住宅を含む全世帯に無料配布(約1万9000部)してきた。

 

 そして、14年11月に有料紙に移行した。毎週水・土曜日にブランケット判4ページを発行。購読料は月額1000円(税込み)、発行部数5000部、新聞製作に携わる従業員は10人。

 

 しかし、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、4月に臨時休刊した。5月に復刊した後も発行回数は土曜日のみの週1回となっていた。「人の流れや行政の動きがストップし、イベント中止も相次いだ。6ページ建てが多かったが、地域ニュースだけで紙面を維持することが難しかった」という。

 

 その後も、釜石市の人口減に伴い、部数も少しずつ減少。釜石市も会場の一つとなった19年ラグビーW杯日本大会の後は、広告収入も減った。中でも、今回の休刊に至った理由として、「従業員10人のうち7人が60歳以上」であることを挙げた。配達員、読者も高齢者が多く、昨年からのコロナ禍も続いている。

 

 震災の直後から10年。復興に向かって進む被災者、被災地の日常を釜石市の地元紙として取材し、書き続けてきた。「読者にはインターネットで情報を取れない高齢者も大勢いるので、大変申し訳ない気持ちだが、10年間精一杯やってきた」と川向氏。3月27日付の第929号(8ページ建て予定)が最後の発行となる。

 

ポータルサイトでの配信は続く

 

 なお、復興釜石新聞のニュースサイトはないが、釜石まちづくり株式会社が運営する「かまいし情報ポータルサイト『縁(えん)とらんす』」で同紙のニュースも配信してきた。紙の新聞はなくなるが、今後は従業員2人が取材記者として、そこでのニュース配信を続ける予定だ。

 

 「釜石市で10年間取材し続けてきて、多くの記事や写真がデータとして蓄積されている。今後も必要とされることもあるだろうから、それらも同社に無償提供することにしている」(川向氏)。