書店で広がるボードゲーム市場拡大と今後の可能性 株式会社すごろくや・丸田康司代表に聞く

2021年3月1日

 このところ書店でも広がってきたボードゲーム。玩具メーカーが作る子ども向けゲームとは異なり、大人が楽しめる内容で作家性もあるという。2006年に創業した株式会社すごろくやは、東京都内に専門店2店舗を展開するほか、自らボードゲームの製作やローカライズ、卸販売、出版事業などを手がける。同社の丸田康司代表取締役に、ボードゲーム市場の現状や書店での可能性などを聞いた。

 


 

すごろくや・丸田康司社長

 

――ボードゲームとはどんなゲームですか。

 

 すごろくやが取り扱っているボードゲームは玩具ではありません。「ユーロゲーム」とか「近代ボードゲーム」と呼ばれ、大人が知的な能力を存分に発揮しながらも子どものように楽しめる、大人のためのかなり知的な娯楽です。専門のボードゲーム作家が作っており、作家の名前が品質を担保しているというのも特徴です。

 

 もともと日本には存在しない分野でしたが、1970年代のドイツでのムーブメントが伝わり、1990年代から日本にも少しずつ入ってきました。

 

 そのため、輸入物が中心でしたが、ここ数年は「ワードゲーム系」と呼ばれる国産カードゲームがブームになっています。

 

――なぜこのお仕事を始めたのですか。

 

 私は元々テレビゲーム制作の仕事をしていましたが、2005年に会社を辞めたとき、それまで触れてきた「ユーロゲーム」の文化を広める役割を果たしたいと考えました。

 

――なぜお店を開いたのですか。

 

 当時、ボードゲームの専門店は東京・水道橋の「メビウスゲームズ」ぐらいしかなく、マニアが頒布会で購入したり、個人輸入するしかなかったので、もっと買える店舗を増やす必要がありました。

 

 私は一般の人が入りやすい店舗にしようと考えました。そのため賃料などとのバランスを考えて、1号店は高円寺にしました。

 

 店舗内の雰囲気を照明を明るくするなどして気軽に入りやすいようにし、カテゴリー表示もわかりやすくして、お客様の話を聞きながら的確にゲームをお薦めするスタイルを確立したのです。

 

一般の人にもわかりやすい表示(高円寺店)

コロナ下でもお客とコミュニケーションできるように設けた仕切りのあるカウンター(高円寺店)

 

ボードゲームの市場規模70億円ほどに

 

――ボードゲームの市場は広がっているようですね。

 

 「ワードゲーム」はテレビでも紹介されることも多く、楽しむ人が増えています。その結果、市場規模は70億円ぐらいに広がっているとみています。

 

 ただ、まだ当社のような専門店は少なく、最近は「ボードゲームカフェ」が増えています。これは漫画でいう「マンガ喫茶」のような存在で、ゲーム作家の著作権や正当な対価が守られていない状況にあります。

 

 市場を健全に育てていくためにはゲームの著作者やメーカーにきちんと利益が還元される仕組みが必要です。そのため、今年は業界団体を作るなどの活動に取り組みたいと考えています。

 

――販売チャンネルはいかがですか。

 

 現在の販路は東急ハンズやロフト、ドン・キホーテなど量販店が中心です。書店での扱いも増えていますが、多くの書店では「ワードゲーム」など売れ筋を中心に扱っていただいています。

 

書店向け商材も提供

 

――書店ではハードルが高いでしょうか。

 

 ボードゲームはエキスパートの店員がお客様の相談に乗ってお薦めしなければ、見知らぬゲームに踏み込んでもらいにくい。書店さんがそういう体制を作るのは難しいかもしれませんが、そうやって本格的に熱量を持ってボードゲームの魅力をお伝えすれば、お店を信頼してリピートしていただけるようになるでしょう。

 

 一方で、昨年、書店さんにも向く商材として『ドラゴンをさがしに』をはじめとしたゲーム絵本シリーズを発売しました。1ページが3つに分かれていて、読みながら展開を選択すると結末が変わるという仕組みです。他にも、絵本作家のあらいひろゆきさんによるゲーム『ナンテッタ』など、書店向け商材は増やしていきます。

 

 また、当社では『おうちでボードゲーム for ママ&キッズ』(スモール出版発行)や13刷の『大人が楽しい 紙ペンゲーム30選』(同)といったロングセラー書籍も出しています。書店さんではまずこうした書籍を扱うことからはじめても良いと思います。

 

ロングセラー書籍も刊行している(高円寺店)

 

 さらに、お店でのボードゲーム導入を容易にするための新しい施策を夏頃から提供していく予定です。

 

 これまで書店さんは返品に慣れてきたようですが、ボードゲームは買い取り条件での取り引きが多いです。ボードゲームはしっかりと紹介して的確にお薦めすれば売れますし、リピーターになってもらえます。ルールの読解力を必要とする性質を考えれば、本好きの人を増やすことにもつながると思いますので是非とも挑戦してみてください。

 

――ありがとうございました。

 


 

 丸田康司(まるた・こうじ)氏 1970年岐阜県多治見市生まれ。テレビゲーム開発者養成学校「HUMANクリエイティブスクール」の第1期生を経て91年からテレビゲーム開発に従事。その後独立し2006年「すごろくや」を設立。オリジナルゲームの企画制作、書籍の企画・制作・執筆、ボードゲームイベントやボードゲーム制作のワークショップ、講座、教育対談の開催などゲームを主軸として活動

 

株式会社すごろくや
従業員30名。ボードゲーム販売専門店の高円寺店(杉並区)と神保町店(千代田区)を展開。所在地=〒166―0002東京都杉並区高円寺北2―3―8日光ビル1階