メディアドゥ ネットギャリーのアプリ「NetGalley Shelf」配信

2021年2月26日

 メディアドゥが提供する、クラウド上のゲラ配布サービス「NetGalley(ネットギャリー)」のアプリケーション「NetGalley Shelf(ネットギャリーシェルフ)」が、このほどローンチされた。

 

アプリで利便性高まる

 

「ネットギャリーシェルフ」のホーム画面

 「ゲラ」というセンシティブなコンテンツを取り扱っていることから、これまではユーザーがフィルタリングソフトやセキュリティソフトをダウンロードし、同サービスを活用していた。

 

 このほどローンチした同アプリをユーザーがダウンロードすることで、「ゲラ」の提供元である出版社は、セキュリティ面を維持しながら、従来通りに同サービスを利用してもらえる。

 

 一方、書店員や司書をはじめとしたユーザー側にとっても、よりストレスを感じることなく、同サービスを利用できるようになった。

 

初期設定・登録の軽減

 

 これまでユーザーは同サービスを利用するにあたり、Adobeなどの外部サービスへのID登録など、ネットギャリーとは別に、その他アプリや会員サービスに登録する必要があったが、今回の「ネットギャリーシェルフ」は、同サービスのIDのみで閲覧できるようになり、初期設定の手間も大幅に軽減された。

 

 実際に閲覧へのハードルが軽減されたことで、ネットギャリーで掲載されている作品のリクエスト数が、アプリローンチ前の前月比で1.6倍に達するなど、着実に利用数を伸ばしている。

 

 一方で、本屋大賞にノミネートされた作品が掲載されたことも、書店関係者の利活用が盛んになった大きな要因だ。

 

 メディアドゥのネットギャリーチーム・藤吉信仁氏は、「以前は初期設定が複雑で断念した人も多かった。しかし今回のアプリ化を機に、当サービスを利用し始めた書店員や司書の方が増えており、新しいユーザーの増加が見受けられる」とアプリ化の手応えを語る。

 

 なお今回、同アプリはベータ版としての提供で、縦スクロールのみでの閲覧となっているが、横スクロールへの対応など、正式版のアプリローンチに向け、現在、同チームは出版社やユーザーからの声を集約することに注力している。

 

講談社 ネットギャリー×ツイッター

ネットギャリー紹介ページ:五十嵐律人『法廷遊戯』

 

 2020年上半期でユーザーからのゲラ読みリクエストが1位となった五十嵐律人『法廷遊戯』(講談社・20年7月刊行)は、刊行の半年以上前にあたる19年12月から翌年1月まで、さらには20年3月から7月まで、ゲラを掲出。新人作家のデビュー作ということもあり、掲出期間を通常よりも長く設けたことで、同作の認知も高まったという。

 

 さらに5月20日から6月30日まで、ネットギャリーでゲラを読んだうえで、ツイッター上で「120字レビュー」をつぶやいたユーザーに対し、10名限定でサイン本を贈呈するキャンペーンを実施。クラウド上のゲラ読みサービスとSNSを掛け合わせたことで、多くのレビューが寄せられ、そのうち上質なレビューの一部を宣伝物に活用するなど、ネットギャリーのサービスを最大化させた。

 

 同社宣伝部・渡辺宏治副部長は同サービスについて「読者に向け、認知度、期待度を高めることができる。また書店員さんに読んでいただくことで、売り場展開など販売施策の一助にもなる」と語る。

 

 また「ネットギャリーシェルフ」について、ゲラのアップロード後のチェック作業が効率化され、シンプルで使いやすくなったことから、担当の編集者などに対し、同サービスの活用を進めやすくなったという。

 

 同社宣伝部・佃ゆき奈氏は「より多くの方に当社の作品を読んでもらい、多くのレビューをいただければ、著者も編集者も喜ぶ。徐々に閲覧数も増えており、発売前に盛り上げるツールとして活用していきたい」と話す。

 

筑摩書房 プルーフとネットギャリーの併用

ネットギャリー紹介ページ:ブレイディみかこ『ワイルドサイドをほっつき歩け』

 

 筑摩書房は、20年6月に刊行したブレイディみかこ『ワイルドサイドをほっつき歩け』で、誰でも読める、リクエスト不要の「すぐ読み」を採用したことで、2020年の閲覧数1位となった。

 

 同書は、本屋大賞ノンフィクション本大賞を受賞したブレイディさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)に続く話題作ということもあり、その話題性を最大化するべく、20年3月の掲載当初から「すぐ読み」で公開した。

 

 紙のプルーフの配布に加え、ネットギャリーに掲載したことで、新型コロナウイルス禍で出勤できない書店員らに読んでもらうきっかけにもなったという。さらに、これまで同社が紙ではリーチできなかった書店に対してゲラを届けることができるようになり、プルーフとネットギャリーを併用することのメリットを挙げる。

 

 また講談社同様、筑摩書房もブレイディさんのデビュー作『花の命はノー・フューチャー』のサイン本を進呈するプレゼントキャンペーンを、約2カ月に渡り実施。キャンペーン期間内で18件、掲載全期間では累計46件のレビューが寄せられ、同社にとって過去最多のレビューが集まったという。

 

 同社・宣伝課の土屋ちひろ氏は、『ワイルドサイドを…』以降、全ての掲載銘柄を「すぐ読み」として公開していることについて、「良質なユーザーを抱えるネットギャリーさんだからこそ、安心して公開することができる。

 

 実際に今までトラブルなく、多くのユーザーの方にゲラを読んでいただいている」としたうえで、「書店員さんをはじめ、ユーザーが場所を選ぶことなく、ゲラを読めることがネットギャリーの良さ。今回アプリ化されたことで、アクティブユーザーがもっと増えてほしい。また発注機能が実装されると、より書店さんにとって利便性が高まるのでは」と同サービスへの今後に期待を寄せる。