朝日新聞×GO「#広告しようぜ」 企画担当者から聞く、新聞広告の新たな可能性

2021年1月25日

左から朝日新聞社・田浦孝博氏、GO・五十嵐麻衣氏

 

 朝日新聞社と広告会社The Breakthrough Company GO(以下GO)は、協賛企業6社と合同プロジェクト「#広告しようぜ」を企画し、新聞広告の日(10月20日)の朝日新聞朝刊の広告で、それぞれの企業活動に沿った広告案を一般の人から募った。2週間の応募期間で、ツイッター投稿から3669件、ウェブ応募から1586件の広告企画案が集まり、応募総数5255案の中から選ばれた企業広告6案を12月29日付の朝日新聞朝刊に掲載した。

 

 「#広告しようぜ」プロジェクトを担当した朝日新聞社メディアビジネス第2部・田浦孝博氏(メディア・ディレクター)とGO・五十嵐麻衣氏(ビジネスプロデューサー)から、企画の狙いやこれからの新聞広告の可能性などについて話を聞いた。

 


協賛企業6社との合同プロジェクト「#広告しようぜ」

新聞広告の日プロジェクト「#広告しようぜ」

 

 ――新聞広告の日プロジェクト「#広告しようぜ」を立ち上げた経緯について教えてください。

 

 五十嵐氏 朝日新聞社さんと「新聞広告の日」で仕事をさせてもらうのは今回が初めてではなく、2019年に「朝日新聞社×左ききのエレン Powered by JINS」を企画させていただきました。「左ききのエレン」は広告業界を舞台とした人気コミックで、朝日新聞の見開き2ページに漫画の架空の企業と実在の企業を登場させたコラボ漫画を掲載し、大きな話題を呼びました。

 

 田浦氏 掲載した漫画は、「左ききのエレン」の主人公が在籍する架空の広告会社とGOの対決を描いたもので、JINSの広告企画を巡り、競合プレゼンするというストーリーでした。2社の企画案はウェブやツイッター上でも公開し、読者投票でより多くの票を獲得した企画を後日、実際に朝日新聞朝刊の新聞広告として掲載しています。

 

「朝日新聞社×左ききのエレンPowered by JINS」は、日本新聞協会の第40回新聞広告賞(新聞社企画・マーケティング部門)を受賞した

 

 五十嵐氏 前回に続いて、今回も「新聞広告の日」でお話をいただいて、「#広告しようぜ」プロジェクトを企画することになりました。「左ききのエレン」とのコラボは、「バズる」を狙った広告企画でしたが、「#広告しようぜ」は議論を生ませることを大きなポイントとしています。

 

 広告は世の中に良い価値をもたらすもののはずですが、一方で生活者からネガティブな印象を抱かれてもいます。そこで広告の良さを知ってもらうために、広告を一般の人が作るという企画を実施することになりました。

 

 田浦氏 「#広告しようぜ」は、実際のユーザーに企業が発信したいことを考えてもらい、表明してもらうことを期待した企画です。

 

 新聞広告は一般的に新聞読者に向けて、広告情報を伝えることを目的としてご活用いただいています。一方で、「紙」という形で残る新聞広告の特性を生かして、写真を撮って広告をウェブにアップしたり、SNSを活用したりすることで新聞広告を起点として、朝日新聞の読者層以外にも広がりを持たせることができると「左ききのエレン」とのコラボや「#広告しようぜ」を通じて気付きました。

 

 ――今回の「#広告しようぜ」は、一般ユーザーから企業広告案を募集する形で、投票よりも応募のハードルが高くなっていると思いますが、反応はいかがでしたか。

 

 田浦氏 当初の段階では、どれくらいの応募が寄せられるのか読めませんでした。ウェブ応募は1000件くらいだと想定していましたが、終盤になると予想を超える伸びで、応募総数は5000件を超え、集計するのが大変だったのを覚えています。

 

 五十嵐氏 募集開始後、初速が早かったのはSNSでしたが、締め切り最後の3日間にツイッターとウェブの双方から多くの応募が押し寄せてきました。時間をかけて広告案を練っていた方々が、一気に応募してくれたのだと思います。数だけでなく、質の面でも完成度の高い作品がたくさん寄せられました。

 

 ――応募総数5255案からどのように選考を行ったのでしょうか。

 

 五十嵐 協賛企業6社に対して、1社あたり1000件前後の広告案が集まりました。まずはGOの社内でクリエイティブチェックを実施して広告案を絞り、最終的には広告主である協賛企業と話し合いをして、掲載する広告案を選出しています。

 

 チェックの過程で細部の変更やロゴの追加などはありましたが、広告デザインは原案からほとんど変わっていません。

 

 田浦氏 選ばれた6つの広告は12月29日付の朝日新聞朝刊に掲載しています。クオリティの高い作品が多くあったので、広告主からは自社のキャンペーンでも使用したいという声がありました。

 

 五十嵐氏 そのほかにも、広告を制作するのにあたり、企業の事業内容や理念を調べないと制作することは難しく、会社ホームページなどを応募者が見る機会が生まれたのは、企業プロモーションとしてもとても良かったです。

 

「#広告しようぜ」 広告主:オージー・ビーフ、受賞者:田中見希子氏/高橋博海氏

「#広告しようぜ」 広告主:水ing、受賞者:各務敦子氏

 

 ――「#広告しようぜ」と通常の新聞広告にはどんな違いがありましたか。

 

 五十嵐氏 一般的に新聞広告は代理店などの企業が制作するものですが、「#広告しようぜ」の新しさは、個人のアイデアを新聞広告に反映させる結びつきがあることです。

 

 田浦氏 広告案の募集から広告掲載にいたるまでのプロセスがあったのも、普通の新聞広告にはない面白味の1つです。新聞が日付メディアであることを生かして、10月20日の「新聞広告の日」に企画参加を呼びかける募集広告を展開し、広告掲載日の12月29日まで楽しんでもらえる企画となりました。

 

これからのメディア 掛け合わせて発信する時代に

 

 ――これからの新聞広告はどうなっていくと思いますか。

 

 田浦氏 仕掛けとしてウェブを組み合わせることで、新聞広告のパフォーマンスが発揮される時代になっていると感じています。

 

 日付メディアである新聞は、告知したい日に、全国の読者に対して情報を届けられることが強みです。新聞広告とデジタルメディアを連携することによって、読者以外にも広がりを持たせる可能性に期待をしています。

 

 五十嵐氏 企業が理念を宣言したり、取り組みを伝えたり、意思を発信するとき、デジタル広告では想いを伝えきれない面があります。伝えたいことをはっきりと発信する場として、新聞広告はこれからも変わらない媒体だと思います。しかし、それだけは難しい状態となってしまうので、「新聞×デジタル」「新聞×テレビ」「新聞×OOH(屋外広告)」など、掛け合わせが大事になっていきます。

 

 新聞のようなオールドメディアだけでなく、ニューメディアのデジタルも含め、これからのメディアはどう掛け合わせて発信していくかが重要になると思います。