紀伊國屋書店が新サービス 欠本を即時送品「SCM欠本補充」開始へ、出版社との連携強化

2021年1月6日

柾谷課長(紀伊國屋書店)

 

 紀伊國屋書店は、出版社が同社店舗の欠本を即時に送品できる新サービス「SCM(サプライ・チェーン・マネージメント)欠本補充」の提供開始を準備している。このほど大幅に機能強化した出版社向け販売・在庫データ提供サービス「PubLine」の利用出版社と契約を進め、出版社と直接連携した取り組みを強化する。

 

柾谷課長「出版社と書店をつなぐ」

 

 「SCM欠本補充」は、紀伊國屋書店と必備銘柄や対象店舗、送品頻度などの条件を契約した出版社が「PubLine」で確認した欠本を、店舗や仕入部門に都度了解を得るといった手続きなしに送品できる仕組み。紀伊國屋書店が2020年夏から進めてきた「PubLine」の機能追加・拡充を前提にスタートする。

 

 同社店売総本部販売促進本部店売推進部店舗オペレーション課・柾谷大地課長は、「対象点数、送品対象店舗、頻度などの条件については個別に詰め、合意できた出版社から順次開始する。出版社との双方向性をさらに高め、コロナ時代における『PubLine』が果たす役割として、これまで以上に密接に出版社と書店をつなぐインフラにしていきたい」と新サービスの目的を説明する。

 

販売・在庫データ提供サービス「PubLine」を拡充

 

 「PubLine」に追加・拡充した機能のうち、「商品一括指定売上推移」「商品一括指定在庫一覧」は、これまで単品でしか確認できなかった販売、在庫状況を500タイトルまで一括で確認できるようにした。

 

 これにより、出版社は自社商品の店別販売状況と在庫状況を一覧で確認できるため、欠本している店舗などを発見することが容易になる。

 

PubLineの商品一括の店舗別在庫画面

PubLineの商品一括の売上推移画面

 

 また、在庫が最後に動いた「在庫更新日」を確認できるCSV出力機能や、複数商品の販売状況を日別で確認することでフェアや広告の効果測定などを容易にする機能も追加した。

 

 予約状況は、商品の発売前に店舗、ウェブストアなどで入った予約数を翌日確認できるようにした。配本状況も取次からの仕入データから新刊配本数を抽出して確認できるため、出版社が発売前後に商品の動きと配本数を把握して、追加補充などの対応を迅速に行うことができる。

 

 このほか、日、週、月別でしか表示できなかったベストセラーメニューを任意の期間で設定できるようにしたことで、年間やフェア期間に合わせた実績把握が可能になった。また、集計メニューに「和書(全て)」を追加し、これまで総合から除いていた文庫、コミックスも含めた市場全体が見えるようになった。

 

 機能拡充について出版社からは「新刊やフェアの実績を把握するための作業量が劇的に削減された。1回の操作で、フェアに入れるべき銘柄とそうでない銘柄が一目瞭然になる。スピードは従来と比較にならない」(幻冬舎営業局・太田和美氏)など、評価する声が聞かれる。

 

 なお、こうした機能の新設・拡充に伴う追加料金は発生しない。

 

他書店も参加する業界インフラに

 

 紀伊國屋書店店売総本部長の藤則幸男副社長は、「重要なのはこの次」と述べた上で次のように語る。

 

 「コロナ禍で出版社との対面交渉の機会が減少しており、また、返品抑制の観点から積極的な配本が行われなくなる可能性もある。属人的な業務に依存した在庫管理では対応の遅れにつながりかねないので、SCM欠本補充の契約出版社を増やしていきたい。また、将来的には他の書店さんにも参加してもらい、この仕組みを業界のインフラにしていければと思っている」。

 

 「PubLine」は同社店舗の販売データを出版社に開示するサービスとして1995年9月に稼働。現在は国内・海外店舗、営業本部(外商)、ウェブストアなど全ての販売データをWebで利用でき、利用料金は月額10万円。利用出版社は約300社。

 

 出版社は、商品を発売した直後の販売動向を重版の判断材料にしたり、他社商品のデータも参照できるため、類書や市場の動向を把握するツールとして、企画立案の資料にするなど、業界インフラ的に利用されている。

 

無料お試しキャンペーン実施

 

 紀伊國屋書店は「PubLine」の稼働25周年を記念して、「無料お試しキャンペーン」を実施している。申し込むと本番環境を1カ月間利用できる。

 

 キャンペーン申し込みや利用の問合せはメール:publine@kinokuniya.co.jp

 

 「SCM欠本補充」の問合せはメール:publine_scm@kinokuniya.co.jp