トーハン オンラインで施策説明会、中期経営計画「REBORN」の進捗など報告

2020年12月3日

オンライン説明会に臨む近藤社長(左)と川上副社長

 

 トーハンは11月30日、東京・港区で同社が運営するコワーキングスペース「HAKADORU」で、出版社向けのオンライン施策説明会を開催した。輸送危機対策での出版社への運賃負担要請や、事前予約を仕入・配本に反映させる「新仕入プラットフォーム」、4支社体制など新たな営業体制、新規事業や社内ベンチャーを生み出すラボ開設などについて説明が行われた。

 

 同社は例年、書店や出版社に施策などを説明するトーハン会代表者総会を開催していたが、今年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止。代わりに全国エリア別でトーハン会代表者を対象にした書店向け説明会を開催した。この内容を出版社に説明するため、代表者総会に招いていた約200社にオンライン説明会を案内した。

 

「HAKADORU」の会場には専門紙記者を招いた

 

 説明会会場には専門紙記者が招かれ、視聴を申し込んだ出版社185社429人にオンラインで配信。近藤敏貴社長が「中期経営計画『REBORN』の進捗」、川上浩明副社長が「本業の復活 マーケットイン型出版流通の創出」と題して説明した。

 

物流コスト負担要請、満額回答の出版社も

 

 物流コストが高騰する輸送危機では、出版社向けに開始したコスト負担要請について近藤社長が「売上規模、ジャンルに関わりない一律の基準でお願いし、ダイヤモンド社、ポプラ社、偕成社など早々に満額回答した社もある」と報告。

 

 また、他取次との物流協業については、日本出版販売と雑誌返品の協業・拠点統合を順次進め、中央社とは返品業務に加え10月から一部帳合書店への送品業務の協業を開始。こうした取り組みが「既成概念を打ち砕くきっかけになれば」と期待を示した。

 

事前予約を商品供給に反映

 

 「本業の復活」については、マーケットイン型流通を実現するため、業界統一の書誌データベース「JPRO」や「BooksPRO」を活用し、書店店頭での事前予約などを仕入れ・配本に反映させる「新仕入プラットフォーム」を2022年度中に稼働させる。

 

 近藤社長は「事前予約を商品供給に反映させる。『JPRO』『BooksPRO』と『TONETS』の連携で大きく前進する」と述べた。

 

 書店の粗利改善では、グループ書店による共同仕入を拡大先行し、将来的に他の書店にも広げていく。現在はポプラ社と八重洲ブックセンター、池田書店とT―Booksellers、双葉社とアバンティブックセンターが取り組みを進めており、川上副社長は「ハードルは高いが避けて通れない道。書店はマージンをアップしなければ経営が成り立たない」と強調した。

 

全国4支社体制に

 

 書店向け営業は、ローコストオペレーションの実践や大型イベントの提案、リアルとオンラインを合わせたハイブリッド営業を展開。また、書店からの注文状況問合せを一元的に受けるコールセンターをトーハン桶川SCMセンター内に開設し、迅速な対応を目指す。

 

6月26日からTONETS-Vで開始した「365Books」、毎週金曜日に配信(画像は11月27日配信号から)

 

 さらに、書店向け情報サイト「TONETS―V」にプロモーションカレンダーや、今週のトレンド、新刊の拡材(POP)などの情報を配信する「365Books」を開始。店頭集客に向けた大型有料企画や他企業との提携によるリアル・バーチャルイベントの提案などを進める。

 

画像は11月27日に配信した「365Books」第20号、売場作りに役立つトレンド情報などを掲載

 

 こうした書店営業を実現するために、21年新年度から特販を含めた全国を「北海道・東北・北陸」、「関東」、「近畿・東海」、「中四国・九州」の4支社体制に再編する。

 

4つのラボを開設

 

 「事業領域の拡大」では、映像作品への出資判断を行う「エンタメ・インベストメント・ラボ」、エンタメ系新規事業の企画立案、事業化を目指す「エンタメ・スタートアップ・ラボ」、社内ベンチャー制度「Business Design Lab」、新時代の書店像を創造する「ネクスト・リテイルモデル・ラボ」を開設。

 

 社内ベンチャーの第1期募集には100件の応募があり、1次審査で通過した10件から実際に投資する案件を選定する。

 

 不動産事業では、本社について来年2月に新社屋を竣工、5月に引っ越し、跡地の活用については年明けに発表する。

 

 フィットネスジム事業では20年度に2店舗の新規店を開店。コワーキングスペース「HAKADORU」は、虎ノ門店(港区)に続き新宿三丁目店(新宿区)を出店した。