澪標『月と太陽 日本書紀の女たち』 「日本書紀」編纂1300年、改めて意義を問う

2020年8月25日

□四六判上製/242㌻/本体2200円

 

 澪標(大阪市・松村信人社長)はこのほど、「日本書紀」や「万葉集」が伝える女性たちを通じて、母系制から父系制へ、男女共同による治世体制から男系の天皇制へと移っていく時代の姿を明らかにする『月と太陽 日本書紀の女たち』(高城修三)を発刊した。

 

 同書は、国家の形態が生まれ始めた弥生時代中期から、古墳時代に至る時代、神の妻となって催事をつかさどる女性と、俗的な祭りごとをつかさどる男性が共同で治める体制から、現代のような天皇制へ移っていく変遷を、他国との交易など時代背景を含めて解説する。

 

 日本の初代天皇とされる神武天皇の妻、吾平津媛の出自や天皇との関係を皮切りに、時には子を生み育てる力によって男性を圧倒してきた女性のあり様を、日本の建国時代を物語る歴史書「古事記」、「日本書紀」から読み解く。

 

 初めて女帝となった卑弥呼から続く巫女王を廃して、統一国家の王となった崇神天皇以降、ここで記される女性たちの浮き沈みが、支配階級の葛藤や、社会・政治思想の変遷を反映するという。

 

 同社の松村社長は、「こうした内容を、学者ではなく作家の視点で解説するのは他に類を見ない。読者は歴史好きの中高年層を想定している。歴史・古代史コーナーでぜひ展開してほしい」と推奨する。

 

【櫻井俊宏】