丸善丸の内本店「SDGsフェア」が大好評、大きな波が来る予兆

2019年12月24日

松本氏と友田副店長(右)

 丸善丸の内本店(千代田区)が10月1日から、同店1階で実施している「SDGs(エスディージーズ)フェア」が好調だ。現在約200タイトルの書籍を展開し、売上上位にランクインするタイトルについては、週単位で50冊から60冊を売り上げている。その中でも日経文庫の『SDGs入門』は、6月中旬の発売から12月19日までで、累計1109冊を販売。フェア期間(10月1日から12月19日まで)でも、375冊を販売。同フェアの実績を受け、同店では2020年1月末までフェアを継続する予定だ。

 

 「SDGs」とは、2015年の国連サミットで採択された2030年を年限とする「持続可能な開発目標」を意味し、「飢餓ゼロ」「ジェンダー平等」「気候変動対策」など、17の目標を掲げる国際的な行動指針を指す。

 

 SDGs関連書について、丸善丸の内本店1階売場長の松本直亮氏は「当初は専門書の色合いが強かったが、徐々に世間に浸透するにつれ、各出版社から入門書も出るようになった。当店のお客様は新しいキーワードに敏感で、今回もこちらが認識する以前に反応を示しており、フェアをできないかと考えていた」と話す。

 

 一方、日本経済新聞出版社は19年8月ごろから「SDGs」をテーマにした自社フェアの受注活動を開始。営業活動を進める中、同店を担当する出版ユニット営業部の今井勇太氏と松本氏の間で、今回の大型フェアをする運びとなった。フェアを実施するにあたり、同出版社のラインアップに加え、それらの編集者らが他社本情報を提供するなど、選書についても協力したという。

 

日本経済新聞出版社と共同で企画実現

 

色彩豊かな17種のパネルが映えるフェア棚

 同店では、前述した17の目標ごとにデザインされた「SDGs」公式のアイコンを拡材として使用。各目標別に関連書を展開しており、テーマにそったタイトルを入れ替えるなど、メンテナンスをすることで実売に結びつけている。また「SDGs」という枠組みであれば、幅広いジャンルの書籍を扱えることから、新刊のみならず、既刊や専門書、学術的な書籍でも、売り伸ばしにつなげることができる。

 

 40代から50代男性がメインの顧客層である同店だが、同フェアについては30代から40代前半からの支持が多く、女性からも好評だという。一方、松本氏は必ずしもビジネスパーソンに強い書店だけでなく、あらゆる立地・規模の書店でフェアが組めるとみている。

 

 「SDGs自体が幅広いジャンルを網羅できるからこそ、いろいろな顧客層に合わせたラインアップでフェアが組める。例えばファミリー層の強い書店であれば、ママ向けの〝SDGsフェア〟ということも可能だ。また中小規模の書店であっても、パッケージさえできればフェアはできる」(松本氏)。

 

 今後のSDGsの動向について、同店・友田健吾副店長は「SDGs自体の認知が進んでおらず、書店担当に浸透していないように感じる。当店でこれだけ反響のあるフェアなので、地域の書店などへ波及することを考えると、これから大きな波が来るかもしれない」と予測。

 

 そのうえで「出版社のみならず、一般メーカーなどからも協力を仰ぎ、広がりを持ったSDGsのイベントも企画している。またSDGsで扱う書籍のテーマ自体は重たいが、考え方やコンセプトは明るくて前向き。規模や展開場所が変わっても、継続的にフェアを続けていき、書店として発信していく」と話す。

 

 松本氏は「あらゆる書籍が当フェアのラインアップ候補。むしろ違う棚を担当している書店員から『SDGsフェアに置いてほしい』という提案や、お客様に『わたしのSDGs』というテーマで募集をかけても面白いかもしれない。さまざまな盛り上げ方ができると思う」と期待する。