文化通信フォーラム、「書籍で成り立つ出版産業」ドイツモデルを紹介

2019年2月5日

 文化通信社は1月24日、第9回文化通信フォーラム「出版のドイツモデルとは何か―マーケットインへの転換のために」を開き、文化通信社・星野渉氏がドイツの出版産業の状況や、書店や取次の取引・流通の仕組みなどについて話した。

 ドイツの出版産業は、書籍と雑誌が同じ流通で販売される日本と違い、取次や書店は書籍の販売で経営が成り立っている。そのため、雑誌の市場が急速に縮小したことで、出版流通の維持が困難になりつつある日本の出版業界が、今後の方向性のひとつとして注目している。

 ドイツでは、書籍の価格は日本よりも高く、販売価格に占める書店の利益率が40%程度と日本の倍近い。日本と同様に定価販売を行っているが、日本のような独占禁止法の適用除外ではなく、法律で書籍の価格拘束が定められている。このため、書店は売れ残った書籍を返品するが、返品率は10%程度の水準にとどまっている。

 これは、書店がこれから刊行される新刊も含めて、すべての商品を注文して仕入れているため、見計らい配本をしている日本の30~40%という高い返品率にならない。

 出版社は年に2回の受注シーズンに、今後刊行する書籍のカタログや見本本を書店に送って注文をとる。

 書店は直接出版社からの仕入れと、取次経由での仕入れを併用しており、多くの冊数を仕入れる大手書店ほど直接取引の比率が高い。これに対して、書籍取次各社は、書店が夕方までに注文すると翌朝に届ける「即納サービス」を行っており、大手書店でも店頭で受けた注文品や、ネットで受けた注文など、顧客の注文はすべて取次に発注するという。

 星野氏は、こうした状況を説明し、これまでの日本の出版流通モデルとは大きく異なるとし、日本でこのモデルを実現するためには相当の飛躍が必要だと指摘。

 また、ドイツの書店経営者が、「出版社に薦められなくても、お客さんが欲しい本は我々のスタッフがわかる。店員は接客が仕事なので、出版社の営業が店舗に行って邪魔してほしくない」と述べたことを紹介し、書店が小売業としての姿勢を持つ必要があると述べた。

※第10回文化通信フォーラム「スマホ時代にメディアが生き残るには-報道ベンチャーJX通信社のビジョン」
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